インフルエンザ治療薬「タミフル」(一般名:リン酸オセルタミビル)の服用と異常行動との因果関係を疫学調査していた厚生労働省の研究班(主任研究者:岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長)は、異常行動を示した約4割は、タミフルを服用していなかったことを明らかにした。タミフルの服用者と非服用者の異常行動発生率には、統計的に差はなかったという。
調査に参加した日本大学の内山真教授は同日に会見し、「インフルエンザにより異常行動が発生することが明らかになった。タミフル服用によって、そのリスクがさらに増すかどうかが今後の研究対象となる」と話している。調査結果は、25日の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会に報告後、別の疫学調査、基礎研究、臨床研究の結果と併せて検討される。それを踏まえ、厚労省は結論を出す。
調査は、全国すべての医療機関を対象に、昨シーズンのインフルエンザの症例から、「突然走り出す」「飛び降り」などの生命に影響が及ぶ可能性のある行動の報告を求めた。その結果、137例が報告された。
137例の中で、タミフルを服用したのは82例の60%で、非服用は52例の38%だった。問題となった10歳代の症例は69例。うちタミフル服用は42例(60%)、非服用は27例(39%)だった。
10代の服用を原則禁止とする緊急安全性情報(ドクターレター)が出された3月21日以降、タミフル服用者の異常行動は2例の報告にとどまっているが、なおも異常行動は18例の報告があった。
研究班は、「(ドクターレターで)タミフルの処方が相当程度減少したと思われるが、10代での異常行動が有意に減少したとは言えなかった」と指摘。内山氏は「異常行動はタミフルを飲まなくてもかなりの頻度で起こる。インフルエンザ脳症の一種ではないか」との見方を示したが、「現時点ではタミフルがシロとは言えず、服用が異常行動の頻度を高めているかどうかを検証する必要がある」としている。
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