米国食品医薬品局(FDA)は2月28日、トキソプラズマ症治療薬であるDaraprim(ダラプリム;商品名、一般名ピリメタミン、日本国内未承認)の初の後発医薬品(ジェネリック医薬品)を承認したと発表した。
FDA長官のStephen Hahn氏は「今回の承認は、トキソプラズマ症にかかると死産や流産リスクが高まる妊婦や、重篤な脳症や死亡のリスクが高まるHIV感染者やエイズ患者などの治療選択肢を増やすもので、これらの人々にとってきわめて重要だ」と、ニュースリリースの中で述べている。
CNNの報道によれば、Daraprimは2015年、製造元のTuring Pharmaceuticals社が薬価を1錠13.5ドル(約1,400円)から750ドル(約7万8,800円)へと50倍も値上げしたことで有名になった。当時、同社の最高経営責任者(CEO)だったMartin Shkreli氏は、“pharma bro(ファーマ・ブロ)”というあだ名で、悪名高い経営者として広く知られるようになったという。
トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫と呼ばれる寄生虫によって引き起こされる感染症のこと。加熱が不十分な肉や貝を食べたり、汚染された水を飲んだり、ネコの糞などに触れたりすることが原因とされる。重症化すると脳や眼などの臓器にダメージを与える可能性がある。FDAによると、トキソプラズマ症は、米国における食中毒による死亡原因の第1位を占めているという。
妊婦、HIV感染者やエイズ患者、一部の化学療法を受けている患者、臓器移植後に免疫抑制薬を使用している患者など免疫系の機能が低下している人は、トキソプラズマ症が重症化しやすい。免疫系の機能が正常な人では、感染しても症状は現れず、心配しなくてもよいケースがほとんどだが、まれに眼にダメージを受けることがある。
なお、今回の後発医薬品は、細菌感染症の治療に用いられるスルホンアミド系抗菌薬と併用して使用する錠剤で、Cerovene Inc社が承認を受けた。
Hahn氏は「FDAは、医薬品競争行動計画(Drug Competition Action Plan)を推進し、後発医薬品の開発や審査、承認の効率化を図るだけでなく、後発医薬品の開発競争を妨害するような障壁を取り除くことに尽力してきた」と強調。今後も、安全かつ有効で高品質の後発医薬品開発の効率性を向上させていくとしている。(HealthDay News 2020年3月2日)
(参考情報)
Press Release
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-generic-daraprim