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危機迫る薬学教育の構造問題

2020年04月17日 (金)

 薬学教育評価機構が行ってきた第三者評価の1期目が一巡した。1期目最後となる2019年度評価では、国際医療福祉大学の評価基準の中項目に重大な問題点が認められるとして、総合判定が保留となった。評価結果では、4年次、6年次のカリキュラムが薬学共用試験と国家試験対策に過度に偏ったものになっていると指摘されたほか、入学者選抜について1年生、2年生に留年者、退学者が多いと問題視した。

 ただ、適合とされた他の大学でも問題がないわけではない。卒業判定に関わる授業などの評価に予備校の模擬試験結果を組み入れていることが不適切とされたが、より深刻な問題は、低学年での留年者と退学者、6年間で卒業できない学生が多いとの指摘であろう。

 19年度評価でも、城西国際大学、徳島文理大学香川薬学部、横浜薬科大学でこの問題が指摘され、18年度評価でも同様の指摘を受ける大学が複数あった。全体で見ると一部かもしれないが、国家試験対策偏重の教育や低学年の留年者、退学者の多さといった毎年の指摘は、6年制薬学教育の質を揺るがす構造的な問題となってきているのではないか。

 既に2年前の新薬剤師養成問題懇談会で、6年制薬学教育の質に対して同様の懸念が相次いで表明されていたが、その後も状況が大きく改善したとは言えない。

 今年度から始まる2期目の評価は、新たな評価基準に基づき、各大学が定める卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受け入れの方針の一貫性や整合性を重視して評価し、薬学教育の「質の改善」を求めていく方向である。

 もちろん、「大事な学生を預かっている以上、偏重と言われようとも国家試験に合格させる義務がある」(地方大薬学部教授)との反論もある。特に地域にはそれぞれ事情があり、地域医療の現場を支える薬剤師の貴重な供給といった側面も考えると、一律に国家試験対策がダメというわけではないだろう。

 しかし、きちんとした医療人としての薬剤師を養成するためには、最低でも低学年で留年、退学しないような学力を持った入学者を選抜しなければならない。低学年の多くの授業を補習に充てるようでは、何のための入学選抜かという話になる。それが多額の学費を出して入学してくる学生や保護者に対する誠意でもあろう。

 これからの大学教育は少子化の影響を確実に受ける。国公立大学でも6年制への一本化が進むなど模索が始まっている。その意味で、全ての薬系大学では学生から「選ばれる大学」への競争が始まっていると言っていい。

 もし、希望を持った将来ある学生をないがしろにするような対応を続ける大学があるとしたら、手痛いしっぺ返しに遭う時代が迫っているという危機感を持つべきである。




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