人間社会が新型コロナウイルスに振り回されて半年が過ぎた。世界の累計感染者数は1000万人を突破し、死亡者数は50万人に達した。日本でも一旦は抑え込んだように思われたが、ここ数日、都内だけでも50人以上が感染確認され続けている。短期収束を楽観視する見方もあったが、新たなウイルスは従来の常識、知見が通用しないことを思い知らされた。
日本でもワクチンの臨床試験が始まったとの一報が入った。数少ない明るいニュースだが、実際に使用できるのはまだ先のようで、治療薬も同様である。それならば、今の段階では感染者数を抑え、重症化を阻止し、死亡者数を極力少なくするほかない。重症化、死亡を抑止するには医療が最重要ポイントになる。現在は、いわゆる医療崩壊は免れているが、これから感染拡大、さらに感染爆発が起きれば、医療体制崩壊の危機は現実味を帯びてくる。
新型コロナウイルス感染症に対処する医療には、対応可能なベッド、人工呼吸器などの医療機器、マスクや防護服などを確保することが必要になるが、これらのハード面が整備されているだけでは医療は提供できない。そこには必ず人の介在が不可欠である。
厚生労働省は、求人情報サイト「医療のお仕事Key-Net」を開設した。新型コロナウイルス感染症への対応だけではなく、幅広く地域の医療機関や保健所などで人手が不足した場合、必要な人材を迅速に確保できるようにすることを目的に、人材募集情報と求職者のマッチングをウェブ上で行うものだ。
中央省庁再編で厚生省と労働省が一緒になったが、医療人材求人情報サイト開設は、文字通り厚労省の面目躍如といったところだろうか。
同サイトでは、医療機関や保健所の医師・看護師などの医療人材の募集情報を掲載し、閲覧者と求職者はウェブサイト上で応募から面接までを行える。募集の対象職種は医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師、救急救命士、事務職と、ほぼ全ての医療関係職種となっている。
直接、新型コロナウイルス感染症に対応している部門だけでなく、この部門への応援に人手が割かれた場合、人材が手薄となった部門が出てしまうため、様々な現場で医療専門資格者が必要になる。
同サイトでは、自分のスキルを生かせる新たな職場を探している人、今は医療現場を離れているが復帰が可能である人に応募の検討を呼びかけている。この状況は、厚労省が自ら医療人材の確保に動かなければならないほど、医療関係の人材不足が逼迫しているとも言える。第二波かどうかは別として、感染拡大は続いている。医療崩壊を招けば一気に死者数が増加することは明らかだ。人、ハード、システムが一体となった医療体制の充実に多くの力を注ぐべき時が来ている。