第53回日本薬剤師会学術大会
分科会の見どころ・聞きどころ
座長
日本薬剤師会常務理事
岩月進
北海道薬剤師会理事
新井俊
世界保健機関(WHO)による定義では、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」とされており、日本薬剤師会のHPでも同様の定義を記載している。
個人が自身の健康について責任を持って対応することは、個人の義務であり、権利でもある。そして、このことを実践していくことにより、毎日の健康管理の習慣が身に付くようになることや、医療や薬の知識が蓄積されていくことなどが利点として挙げられる。
また、その経験や知識により、医療機関を受診する際に、自身の症状や生活環境などの情報を医師へ効果的に提供できることや、軽度な疾患や外傷は医療機関への受診を控え、適切な受診行動が推進されることで、医療費の増加の抑制に貢献できることが期待されている。
本年のコロナ禍による受診抑制により、セルフメディケーションを実施する方々が増えてきているように感じる。一方で、医療用医薬品から一般用医薬品への転用、いわゆるスイッチOTC医薬品の上市も徐々に進みつつあり、消費者の選択肢が広がると同時に、医薬品の選択判断がより高度化しているとも言える状況になってきた。
そこで、本分科会では、「セルフメディケーションを科学する」というテーマを掲げ、われわれ薬剤師は、セルフメディケーションのサポートにおいて、どのような内容をいかにして利用者に提供すべきなのかを参加者と共に考えていただく企画とした。
最初に、昭和大学薬学部の亀井大輔先生にご登壇いただき、「薬学的視点から考える薬剤師の臨床判断」というテーマで基調講演をいただく。その後、帝京平成大学薬学部の亀井美和子先生、昭和女子大学の梅垣敬三先生の2人の大学教員による発表と、藤田知子、佐々木孝雄の両先生による現場からのご発表を交えて、テーマを実践するにはどのようなスキルや知識の集積が必要なのかを探っていきたい。
セルフメディケーションか、医療機関への受診かといった二者択一的な考え方ではなく、個人が自身の健康管理に留意しつつ、一般用医薬品と医療機関への受診の組み合わせや、使い合わせが上手にできるよう、薬剤師のスキルを向上させる一助になれば、座長としての職責を果たせるのではないかと考える。
(岩月進)