第53回日本薬剤師会学術大会
分科会の見どころ・聞きどころ
座長
日本薬剤師会副会長
川上純一
NTT東日本関東病院
折井孝男
医薬品は、私たちが健やかで幸せな生活を送るうえで必要不可欠なものである。科学技術の進歩により私たちはさまざまな困難を乗り越えてきた。医薬品は、言わば人類の叡智の結晶であり、これらを通じてさまざまな疾病を克服してきたと言える。
患者さんが従来にも増して安心して医薬品を服用・使用するためには、薬剤師による安全性情報の提供・共有が必須となる。
米国の基幹病院では、半数を超える患者さんがインターネットで自分の病気に関するevidence based-medicineのデータを持ってくると言われている。患者さんが病院内からMEDLINEなどのデータベースへアクセスすることをアシストする仕組みもあるようだ。
このようなコンピューターリテラシーの向上は、医薬品に関する知識を、医療という世界の秘儀から、患者(消費者)さんに対して開かれた情報に変化させていく契機となっている。わが国においても患者さん側からの医薬品情報へのアクセスは急速に容易になり、医療サービスのあり方を今後さらに変化させていくことと思われる。
一方、薬局からどれほど質の良い情報が提供できるかは、患者さん、薬剤師関係の本質的な部分に影響を与えざるを得ないのではないだろうか。個々の患者さん、さらに社会全体に対しても、医薬品に関する質の良い情報提供は信頼関係に変化していくものと思われる。
本分科会では、最初に基調講演として、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長の中井清人先生に、薬局薬剤師に期待する患者さんの心に触れる安全性情報のあり方についてご講演いただく。
次に、北海道大学大学院の小笠原克彦先生には、医療情報の専門的な立場から情報の扱い方について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)杉山祥子先生からは、リスクコミュニケーションツールの一つであるリスク管理計画(Risk manegement plan:RMP)を中心に、薬局薬剤師の先生方が安全性情報を利活用するために必要なリスクコミュニケーションツールの特徴と活用方法を紹介していただく。
さらに、薬局薬剤師の立場として東京都薬剤師会の小野稔先生からは、薬局における安全性情報の利活用について具体的なお話をいただき、最後にフロアを含め、シンポジストの先生方と討論することとしたい。
(折井孝男)