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見えざる危機にも注視が必要

2020年10月09日 (金)

 日本には、きちんとした要因による記念日のほか、語呂に合わせた様々な記念日がある。語呂の豊富さは日本語の特徴でもある。例えば、10月3日は「登山の日」、10月4日は「投資の日」「イワシの日」、英語を含めた「天使の日」などまである。毎日いくつもの記念日があり、例年であれば関係者が大勢集まって盛大にイベントが開催されていたが、今年は中止もしくは規模縮小、インターネット上でのオンライン開催となっており、気分的な盛り上がりに欠けると共に、経済的な打撃も大きい。

 アメリカのトランプ大統領夫妻が新型コロナウイルスに感染したニュースは、即日中に世界を駆け巡った。病院に搬送されるためヘリコプターに乗り込む際には、足取りが重いように見えた。万が一の場合、世界の安全保障や経済に大きな影響を及ぼすことが想像されたが、幸いなことに現在は回復したようだ。

 世界中で死者、感染者は増えており、コロナ禍は拡大を続けている。感染者が重症化すれば健康上の危機は目に見えるが、見えない危機も潜在する。それが心の病である。著名な俳優が相次いで自殺したニュースは、近親者だけでなく多くの国民にも衝撃を与えた。

 有名人に限らず、一般国民の自殺も増加傾向にある。警察庁提供の自殺者数データから厚生労働省がまとめた自殺者数(9月18日暫定値)を見ると、今年1月から8月までの累計自殺者数は1万3169人で、対前年同期比689人、約5.0%減少しているが、8月単月の自殺者数は1854人で、前年より251人、約15.7%増加している。コロナ禍の状況を鑑みれば、今後も増加していく危険性は排除できない。

 自殺者増加傾向という事態を受け、厚生労働省のホームページには、厚労相名で「生きづらさを感じている方々へ」というメッセージが9月10日から掲載されている。

 多くの場合、自殺の原因は明らかになっていないが、主要な自殺原因の一つとされるのがうつ病である。巷間では「コロナうつ」なる言葉まで見られるようになった。うつ病に対しては、三環系、四環系、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)など多くの治療薬が使用されている。効果が現れるまで時間を要することや、効果も個人差が大きいなどの課題もある。新薬の出現も期待するが、何よりもうつに陥らないことが最善手である。

 普通の病気は、完治もしくはある程度緩解すれば元の生活に戻れるが、心を病んで自殺という最悪の結果を選択しては絶対に元には戻れない。周りの人たちが気づいて手を差し伸べることで、尊い命を救えることもある。潜在する危機に注視していくことが求められている。



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