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品質管理重視の姿勢、一層必要に

2021年04月23日 (金)

 後発品メーカーの小林化工が製造販売する抗真菌薬「イトラコナゾール錠」に睡眠薬のリルマザホンが混入し、多数の健康被害が発生した事件について、外部有識者で構成する特別委員会による調査報告書が公表された。

 135頁に及ぶ報告書では、医薬品製造業者として役職員を含めたGMP法令遵守の欠如や製造部門の体制不備が常態化していた点などを列挙し、小林化工が2000年代半ば以降、辿ってきたのは「GMP不在の生産拡大」と厳しく指摘した。

 00年代半ばと記された点に注目したい。ちょうど国が後発品の使用促進策を本格化し始めた時期と重なる。当時、小林化工の売上高は30億円規模だったようだが、20年3月期には370億円と10倍以上に伸長している。

 一方で、法令上要求されるGQP、GVP、GMPの社内組織は整備されていたものの、内実を伴っているとは言えない状態だったという。

 当時からの後発品使用促進の追い風と相まって、小林化工の製造現場で何よりも優先されていたのが、スケジュール通りの出荷である。GMP遵守体制の整備が置き去りにされる中、右肩上がりの生産量の増加が製造や品質管理試験の現場を圧迫。こうした現場での負荷がGMP違反を誘発する状況にあったが、現場の実態を改善すべき立場である経営陣らは抜本的な措置を講じなかった。

 これまでも、化学及血清療法研究所による血液製剤の不正製造など、GMPの逸脱事象が製薬業界でクローズアップされてきた。その意味では小林化工に是正の機会はあったと言えるが、結果として長年の隠蔽体質は、混入した製品服用後に死亡や健康被害の症例が相次いだことにより不正が発覚するという最悪の事態を招いた格好だ。

 8月1日に施行予定の改正GMP省令では、上級経営陣は「医薬品品質システムの確立及び実施並びにその実効性に責任を持つこと」と明示されている。医薬品製造販売業としてのコンプライアンス体制の確立はもとより、品質における企業ガバナンスも問われてくる。

 今回、医薬品製造販売業の不正が明るみに出た形だが、8月施行の改正医薬品医療機器等法では、薬局開設者においても、薬事法令の規定を遵守するため、管理者の権限や責任を持つ役員の明確化を求めている。

 手順書作成など法令遵守の体制整備、薬局管理者からの意見への記録作成や書面化も求められてくる。

 過去にも、調剤報酬の付け替え請求や偽造医薬品の流通問題などの企業ガバナンスが問われる事件が起きている。今回の小林化工の事件を対岸の火事として捉えるのではなく、製配販に携わる経営者クラスは自ら責任を持ち、利益重視のみに偏重することなく、医薬品の品質管理に努めていくという姿勢がこれまで以上に必要になる。



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