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医薬品卸に求められる真の変革

2021年06月04日 (金)

 日本でもようやく新型コロナウイルス感染症ワクチン接種が加速してきたが、様々な課題も出てきている。目立つのは、接種会場での保管温度逸脱事例である。厳格な温度管理が必要な製品の扱いに不慣れな人が携われば、このヒューマンエラーが生じることは容易に想像できたはずであり、管理責任者を置かなかったことはお粗末としか言いようがない。

 接種を行う人員不足も解消すべき喫緊の課題である。薬剤師も接種可能な職種の対象として議論の俎上に上がったが、見送られた。一方、臨床検査技師と救急救命士は接種が認められた。いずれにしても、全ての医療職は一致団結し、それぞれの職能を発揮して新型コロナウイルス感染拡大からの脱却に貢献することが必要だろう。

 全国各地でワクチン配送を担っているのが医薬品卸である。新型コロナによって通常医療が縮小し、医薬品流通業にも打撃を与えていることは卸各社の決算によって一目瞭然だ。さらに、卸業界にとって重大な課題として、大手卸による独占禁止法違反容疑事件がある。今月末には判決が言い渡される見通しである。

 5月27日に書面で開催された日本医薬品卸売業連合会総会では、この事態を重く捉え、11項目の「コンプライアンス宣言」を出した。医薬品卸全体が社会的責任と使命を意識し、誠実かつ確固たる倫理観に基づき、コンプライアンスをより一層強化するためのものだと表明している。

 薬卸連は、1月の理事会で決定した2021年重点事項に、新型コロナウイルス感染症下における医薬品の安定供給、医薬品流通をめぐる環境変化への対応と共に、コンプライアンスの強化を盛り込んでいたが、今回の宣言はさらに踏み込んだものだ。

 総会で、再び会長に就任した鈴木賢氏は「医薬品卸の英知を結集して、社会から信頼される医薬品流通を構築する」とのコメントを発表した。その中では、コンプライアンス宣言を踏まえた対応に努めると同時に、時系列的に過去からの取り組みの継承、現下の諸課題への適切な対応、将来に向けた道筋の提示の3本柱を据えた。

 特に、将来に向けては4月に「医薬品卸将来ビジョン2021の検討会議」を立ち上げて、医薬品流通の方向性を示す作業に着手していることに触れている。

 鈴木氏は、コメントの最後に、業界全体の変革を進めていくことを自らの責務と位置づけ、国民の健やかな暮らしを支えるという原点に立ち返り、コンプライアンスの徹底・強化に努め、医薬品流通のサステナビリティを維持・強化しつつ、新たな社会的価値を創出することこそが、医薬品卸に課せられた新たな使命だと締めくくった。

 業界全体が同じ轍を踏んできた現実を顧みて、今度こそ社会からの信頼を得られる真の変革が実現できるか、その実行力が問われている。



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