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未知の症例に対する警戒を

2022年05月02日 (月)

 厚生労働省は4月25日、欧米で報告されている原因不明の小児急性肝炎について、国内で世界保健機関(WHO)作成の暫定的症例定義「可能性例」に該当する入院症例が1件発生したと公表した。

 WHOは、暫定の症例定義として、[1]確定例:現時点でなし[2]可能性例:2021年1月1日以降、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)またはアラニントランスアミナーゼ(ALT)が500IU/Lを超える急性肝炎(A~E型肝炎除く)を呈する16歳以下の小児[3]疫学的関連例:確定症例の濃厚接触者である任意の年齢の急性肝炎(A~E型除く)を呈する者――を定めている。今回報告されたのは、このうちの[2]に該当する症例だった。

 同日、国立感染症研究所が「欧米での小児重症急性肝炎の報告について」を発表した。それによると、4月21日現在、小児における原因不明の重症急性肝炎症例が欧米12カ国から169例が報告されており、17例で肝移植を要し、死亡例1例となっている。

 年齢分布は、月齢1カ月から16歳までで、多くの場合、腹痛、下痢、嘔吐等の消化器症状の後、肝逸脱酵素の上昇(ASTまたはALT500IU/L以上)と黄疸を呈し、ほとんどの症例で発熱は認められなかったという。

 また、全てでA~E型肝炎ウイルスは検出されていないが、74例でアデノウイルスが検出され、亜型が確認された症例中18例からアデノウイルス41型が検出されている。さらに、20例からはSARS-CoV-2が検出され、そのうち19例はアデノウイルスとの同時感染だった。

 感染研は国内における状況について、小児の急性重症肝炎が著しく増えている兆候や、アデノウイルスが通常想定される以上に流行している兆候はないとしている。

 今後の見通しとして、「各国では、症例が著しく増加している兆候はなく、患者の周囲に容易に感染し急速に感染者が増加する状況ではない」としたほか、国内でも前述の状況から、「まずは医療関係者への注意喚起により、類似症例の探索を進める段階である」との考えを示した。

 原因に関しては、感染症が疑われるが確定ではないとの前提のほか、「原因究明は、各症例について様々な感染症、化学物質等の原因を含めて広範囲に行うことが必要」とした上で、「このような事例の原因究明には、症例の集積による分析が不可欠であり、一定の時間を要する」「諸外国での原因探索進捗から知見を得つつ、丁寧な調査・分析を進めていくことが重要である」とまとめた。

 厚労省は、「引き続き各国政府やWHO、専門家等とも連携しつつ、諸外国の感染状況を注視しながら、情報収集に努めていく」とコメントした。

 今回の事例は、全ての既知・未知の症例にも警戒を怠るべきでないことを訴えかけたと言える。



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