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新たながん免疫療法に期待

2016年4月15日 (金)

 厚生労働省の人口動態統計によると、がんは1981年以来連続で日本人の死因第1位を占め、3人に1人ががんで死亡している。

 がんの三大治療としては、▽手術▽化学療法▽放射線療法――が挙げられるが、最近、がんによって欺かれた免疫監視機能を目覚めさせて免疫機構を正常に機能させる新しいがん免疫療法が話題となっている。

 免疫は、外敵(病原菌)、内敵(がんや有害代謝産物)から生体を防御するための働きで、「敵か味方かの識別」と「敵は攻撃し、味方は攻撃しない」のシンプルなメカニズムで恒常性を保つ。免疫の中でも、特にT細胞は、腫瘍に対して非常に強い攻撃力を発揮するため、がんの免疫療法ではT細胞をいかにうまく使ってがんを退治できるかが重要なポイントになる。

 だが、従来の免疫療法は、攻撃力を高めるだけのものだったため、がん細胞が発する“味方”のシグナルに欺かれてうまく攻撃できず、ことごとく失敗してきた。

 では、がん細胞は、どのようにして免疫監視機構に正常細胞として認識させるのか。通常、T細胞は、がん細胞特有のMHC抗原表示をT細胞抗原受容体(TCR)で認識してがん細胞を攻撃する。だが、がん細胞は、細胞表面にPD-L1分子を出すことで、「私は敵ではなく味方」というシグナルを発する。

 このPD-L1分子がT細胞のPD-1と結合すれば、T細胞ががん細胞のMHC抗原表示を認識していても「味方」と欺かれて攻撃を中止する。従って、PD-1/PD-L1結合を阻害すれば、がん細胞によって欺かれたT細胞の認識機能が正常化して免疫機能は正常に働く。

 新しいがん免疫療法は、PD-1/PD-L1結合を阻害して眠った免疫機構を目覚めさせるもので、PD-1、PD-L1を標的とした新しい免疫チェックポイント阻害薬の開発が国内外で進められている。

 世界初のヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるオプジーボは、14年7月、根治切除不能な悪性黒色を効能・効果として日本で製造販売承認された。海外では、日本、韓国、台湾で協働するブリストル・マイヤーズスクイブが現在、40カ国以上で承認を受けている。

 その後、国内では、昨年12月17日に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応症が追加された。

 オプジーボの開発状況については、既に30がん種以上が臨床ステージまで上がっており、国内では腎細胞がんが申請中で、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がんなど6がん種が最終ステージ(PIII)にある。オプジーボ以外のPD-1抗体では、米国で米メルクが、ペムブロリズマブをPD-L1陽性の転移性非小細胞肺がん治療薬として発売している。

 一方、抗PD-L1抗体は、ロシュ、アストラゼネカ、ファイザー、ドイツメルクで開発が進められているものの、まだ上市には至っていない。

 とはいえ、免疫チェックポイント阻害によるがん治療は、これまでの治験結果などから長期生存の可能性が示されているようだ。PD-1/PD-L1結合に着目した新しいがん免疫療法への期待は大きい。




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