スペイン拠点と日欧連携‐グローバルにサポート
AGCのライフサイエンス事業は、医薬品・農薬の開発・製造を受託するCDMO事業を中心に展開し、合成医薬品・農薬だけでなく、バイオ医薬品や遺伝子・細胞治療薬分野にも注力している。この中で合成医薬品CDMO事業は、2019年にスペインの合成医薬品原薬製造会社を買収。主な拠点として、スペインの拠点のほかに日本国内においては千葉県と福井県に拠点を保有。この日欧連携により、顧客をグローバルにサポートできる体制が整っている。

同社は「日欧で人事交流なども行っており、言葉や文化を超えてスムーズにプロジェクトを進行できる」と述べ、実際に受託案件では、顧客から「現地に日本人がいると安心」との声も寄せられているという。
また、グループとして長年培った技術・ノウハウ、施設と、製薬企業経験者など多種多様なバックグラウンドを持った人財を揃え、開発初期から商用向けまでの幅広い、かつ柔軟なサービスを提供している。
ライフサイエンス事業の歴史は長い。1973年に研究所内に「ライフサイエンスチーム」が発足し、80年に事業化。得意のフッ素化技術を生かしたもので、85年には製薬企業向けに抗菌剤用フッ素中間体の受託製造を実施している。
ライフサイエンス事業の売上は、バイオ医薬品CDMO事業は7、合成医農薬CDMO事業は3という割合。25年には売上高1500億円を計画しており、その内、合成医農薬事業は堅調に推移する見込み。開発面では、各工場と研究所に研究者を配置し、豊富な人財、実験設備、合成プロセス技術が蓄積されている。
合成医薬品CDMOでは、前臨床試験から第I相試験までの開発初期の案件が増えているという。同社は「開発初期は特にスピードが大事で、AGCの開発力が生かされている」と説明する。開発初期以降のステージでは、最大で15m3の反応窯を保有している。商用を見据えた大きい数量の案件も増えており、同社の強みであるラボから商用までのスピーディーなスケールアップとそのノウハウを生かしている。また、高薬理活性化合物の引き合いも増えているという。
後発医薬品を中心とする供給不安を背景に、BCPの観点から、商用医薬品の原料の引き合いも出ている。原料探索(原料探索、サプライヤー現地訪問、価格交渉)に特化した専任担当者を配置し、対応している。
スペイン拠点は買収後、研究開発棟の新設、キロラボの新設、製造棟の増設と三度の投資を実施している。25年には新設備が稼働し、製造能力は30%アップ、需要高まる高薬理活性原薬の設備も追加する。今後も需要拡大に柔軟に対応できるよう、製造能力の増強を順次進める予定だ。
同社は、「ライフサイエンス事業でお客様から最初に声がかかる存在」を目指す。4月の「CPHI Japan 2025」に出展する。
AGC
https://www.agc.com/products/lifescience/detail/small_molecule_CDMO_services.html