日本病院薬剤師会と日本臨床救急医学会はこのほど、「救急外来における薬剤師業務の進め方」を作成した。平時や患者搬送時の時間の流れに沿って、救急外来で薬剤師が実施すべき標準的な業務内容を分かりやすく解説したもの。全国の医療機関で、救急外来での薬剤師の業務拡充に取り組んでほしい考えだ。
進め方は、救急外来業務の診療の流れに基づいて、▽平時▽患者搬送前▽初期診療▽救急外来退出時――の各段階で薬剤師がどう関わるべきかという業務の進め方を解説している。全国には様々なタイプの救急外来があることから、先進的な業務を示すのではなく、標準的な業務内容の解説に重点を置いた。
各段階で薬剤師が何をすれば良いのかをチェックする項目を設けたことも特徴だ。患者搬送時にその場でやるべきことを確認したり、業務体制を整備したりすることに役立つという。
診療報酬の評価や認定・専門薬剤師制度の構築を背景に、救急医療に関わる薬剤師は増えてきた。厚生労働省の調査によると、救命救急センターのある医療機関の約75%で常勤薬剤師が配置されている。
ただ、薬剤師の関わりは集中治療室などが中心で、救急外来への関与はまだ十分ではない。日病薬学術小委員会の調査で、三次救急医療機関や二次救急医療機関の救急外来で薬剤師が常駐やオンコールでの現場対応、電話対応などで関わる割合は約90%に達しているものの、常駐の割合は15%ほどだった。オンコールを含めて薬剤師が現場で業務を行う割合は約40%となっていた。以前に比べると救急外来への薬剤師の関与は進んだものの、常駐など薬剤師が現場で業務を手がける施設は半数以下と少ない。
一方、救急外来で薬剤師が関わった効果として、薬歴をしっかり把握できるようになることや、治療開始までの時間が早まること、インシデントが減少することなどのエビデンスが示されている。
タスクシフト推進が求められる中、薬剤師が関わると、医師や看護師は自身の仕事に専念できる。進め方の作成に関わった執筆者は「多様な患者が搬送される救急外来で、医師だけでは専門分野ではない薬への対応などカバーできないことも少なくない。ジェネラルな知識を持つ薬剤師がいることで、医師は心理的な安定性を保てる」と語る。
日病薬は2026年度診療報酬改定に向けて、救急外来の薬剤業務の評価新設を重点要望項目の一つに設定した。前回改定時に要望し実現できなかったが、今回はどこまで理解を得られるだろうか。
診療報酬という収入の裏付けがあれば、医療機関は薬剤師のマンパワーを救急外来に回しやすくなる。進め方の作成で、全国の救急外来で薬剤師が標準的な業務を実践する指針はできた。後は診療報酬の評価を得て、全国での業務拡充につなげたいところだ。