リフィル処方箋とは?:通院負担軽減と医療費適正化

更新日:2025年12月24日 (水)

 症状が安定している患者が、一定期間内であれば医師の診察なしに繰り返し薬を受け取れる「リフィル処方箋」。2022年の導入により、患者の通院負担軽減や医療費適正化の切り札として期待されていますが、実際の運用には医師の判断と薬剤師による継続的な服薬管理が不可欠です。また、長期処方との使い分けや対象となる患者の条件など、実務上正しく理解しておくべきポイントも少なくありません。本記事では、リフィル処方箋の定義や基本的な仕組みから、メリット・デメリット、現場での課題、そして今後の展望までを詳しく解説します。

リフィル処方箋とは?基本的な理解を深めよう

リフィル処方箋の定義と目的

 リフィル処方箋は、医師が「症状が安定している」と判断した患者に対し、一定期間内で同じ処方内容を繰り返し使用できるようにする処方箋です。 受診のたびに処方箋を発行しなくても継続治療を続けられる点が特徴で、患者の通院負担(時間・移動)を減らし、治療の継続性を高める目的があります。 典型例は高血圧、脂質異常症などの慢性疾患で、医師による計画的な管理と薬剤師の継続的な服薬支援が前提になります。

通常の処方箋との違い

 通常の処方箋は原則「1回の調剤(1回限りの使用)」を想定し、交付後の有効期間は一般に4日とされています。 一方、リフィル処方箋は処方箋様式の「リフィル可」欄にチェックが入ることで、同じ処方を反復して調剤できる仕組みです。

 調剤時は、次回調剤予定日や受診予定、患者の副作用・体調変化を「お薬手帳」や薬歴で継続確認し、必要時は受診勧奨につなげる点が実務上の大きな違いです。

 長期処方・リフィル処方の活用について
 リフィル処方せんについて(政府広報オンライン)
 リフィル処方せん(全国健康保険協会)
 【厚労省】リフィル処方は上限3回‐「薬剤調製料」を新設(薬事日報)

リフィル処方箋のメリットとデメリット

リフィル処方箋を利用するメリット

 最大のメリットは、通院回数を減らして患者の時間的・身体的負担を軽くできる点です。 受診が減ることで診察料等の支出が抑えられる可能性があり、医療費の適正化にもつながると期待されています。 とくに現役世代や在宅医療など、受診の調整が難しい患者にとっては「必要な治療を継続しやすい」サービス設計になり得ます。 一方で薬局側は、患者の希望確認と服薬状況の継続フォローを前提とした体制が整っていることが重要です。

リフィル処方箋のデメリット

 デメリットは、受診間隔が空くことで医師の直接評価(対話・診察)が減り、病状変化の見逃しリスクが上がる点です。 副作用や服薬アドヒアランスの問題は、患者の自己管理に依存しやすくなるため、薬局での継続確認と「異変時は受診」への導線づくりが欠かせません。 さらに、対象外薬(新薬、向精神薬等)があり、患者の「同じ薬を続けたい」希望だけでは運用できない場面もあります。 薬剤師としては「不安があれば医師に戻す」判断基準(受診勧奨の条件)をチームで共有しておくと、現場対応が安定します。

 リフィル処方せんについて(政府広報オンライン)
 リフィル処方せん(全国健康保険協会)
 【中医協総会】「処方権は医師のみ」と牽制‐リフィル評価拡充議論(薬事日報)
 【NPhA】リフィル処方箋で手引き‐受診勧奨必要な状況示す(薬事日報
 【厚労省】リフィル処方は上限3回‐「薬剤調製料」を新設(薬事日報)

リフィル処方箋の対象患者

リフィル処方箋が利用できる条件

 リフィル処方箋の出発点は医師の判断です。症状が安定し、同一処方で一定期間の継続が可能と医師が評価した場合に、処方箋へリフィル可の意思表示がなされます。 また、総使用回数には上限(最大3回まで)が設定されており、無制限に繰り返せる制度ではありません。 実務では「次回調剤予定日」や「次回受診予定」を前提に運用されるため、薬局は予定日管理と、予定日を外れた場合の対応(理由確認・受診勧奨)をルール化しておくと安全です。

対象となる患者の特徴

 対象になりやすいのは、慢性疾患で病状が安定し、治療の継続が必要な患者です。 ただし「高齢者だから」「通院が大変だから」だけで適用されるわけではなく、服薬管理が比較的容易で、体調変化を自分で把握しやすいことが重要です。

 逆に、薬剤調整が頻回に必要なケースや、医師の投薬量に限度が定められる薬(向精神薬等)は対象外になり得ます。 かかりつけ薬局としては、患者の症状推移と服薬状況をグループ内で共有し、在宅医療など地域の環境に合わせてフォロー体制を設計するのが現実的です。 ”

 リフィル処方せんについて(政府広報オンライン)
 リフィル処方せん(全国健康保険協会)
 長期処方・リフィル処方の活用について
 【厚労省】リフィル処方は上限3回‐「薬剤調製料」を新設(薬事日報)
 【NPhA】リフィル処方箋で手引き‐受診勧奨必要な状況示す(薬事日報)
 デジタル行革の薬局影響に注目(薬事日報・社説)

リフィル処方箋と長期処方の違い

リフィル処方箋と長期処方の基本的な違い

 リフィル処方箋と長期処方は似て見えますが、設計思想が異なります。リフィル処方箋は「同一処方を複数回に分けて受け取る」仕組みで、医師が使用回数(上限3回)や期間を設定します。 一方、長期処方は「1回の処方で長期間分をまとめて交付する」考え方で、患者は原則1回の調剤で一定期間分を受け取ります。 薬局視点では、リフィルは来局ごとに副作用や残薬を確認しながら継続支援できる反面、予定管理が必要となります。

それぞれの利用シーン

 リフィル処方箋は、慢性疾患で状態が安定し、毎回の受診を減らしても安全性が担保できる場面に向きます。 近年は花粉症対策の文脈でも、長期処方やリフィル活用を周知する動きがあり、生活スタイルに合わせて選択できるようになってきています。 一方、長期処方は、一定期間の治療方針が固まり、薬の管理を簡素化したい場合に便利です。 いずれも「患者の希望」と「医師の判断」を両輪に、薬局が毎回の聞き取りとお薬手帳の更新で継続性を支えることが重要です。

 長期処方・リフィル処方の活用について
 リフィル処方せんについて(政府広報オンライン)
 【厚労省】リフィル処方は上限3回‐「薬剤調製料」を新設(薬事日報)
 【厚労省】リフィルなど活用を‐花粉症薬で事務連絡(薬事日報)
 【政府】花粉症薬でリフィル推進‐対策パッケージまとめる(薬事日報)
 【NPhA】リフィル処方箋で手引き‐受診勧奨必要な状況示す(薬事日報)

リフィル処方箋の普及と今後の展望

リフィル処方箋普及に向けた課題

 リフィル処方箋の普及の壁は「制度は知っているが、運用が定着しない」点にあります。実際、患者の認知度は十分とは言えず、制度開始から時間が経っても全処方箋に占める割合が低いことが課題として指摘されています。 医療従事者側でも、受診勧奨の基準や反復調剤時の確認手順が薬局ごとにばらつき、現場の不安につながりがちです。 だからこそ、反復調剤のチェック項目(副作用、残薬、アドヒアランス)と、医師へ戻す条件を「手引き」等に沿って標準化することが、導入対策として現実的です。

リフィル処方箋の今後を左右する鍵

 リフィル処方箋が普及する鍵は、テクノロジーと医療の質を同時に上げる設計です。電子処方箋は医療機関・薬局間の情報連携を支える基盤で、運用が進めば、リフィル処方箋の管理(履歴・重複投薬の確認等)も効率化し得ます。 一方で、制度の目的は「受診を減らすこと」ではなく「必要な受診に集中すること」です。 そのため薬局は、次回調剤ごとに患者の希望と状態を確認し、必要時は適切に受診へ“戻す”判断を磨くほど、制度の信頼性が高まります。

 電子処方箋(厚生労働省)
 電子処方箋(デジタル庁)
 リフィル処方せんについて(政府広報オンライン)
 デジタル行革の薬局影響に注目(薬事日報・社説)
 【NPhA】10月のリフィル応需26%‐面薬局で実績多い傾向(薬事日報)
 【NPhA】リフィル処方箋で手引き‐受診勧奨必要な状況示す(薬事日報)

薬事日報で読むリフィル処方箋

 薬事日報では、リフィル処方箋が「検討段階→制度導入→運用定着・KPI議論」へ移る過程を継続的に報じてきました。 近年は花粉症対策や医療DXの文脈で活用推進が再び焦点化し、導入率の低さ・KPI設定・現場手順の整備が論点になっています。薬剤師は、 政策の“流れ”と現場の“課題”をセットで追うと良いでしょう。

 【経済財政諮問会議】「リフィル処方箋」検討を(薬事日報・薬学生版)
 【中医協・基本問題小委】リフィル処方箋、否定的意見相次ぐ(薬事日報)
 【厚労省】リフィル処方は上限3回‐「薬剤調製料」を新設(薬事日報)
 【NPhA】リフィル処方箋で手引き‐受診勧奨必要な状況示す(薬事日報)
 【厚労省】リフィルなど活用を‐花粉症薬で事務連絡(薬事日報)
 デジタル行革の薬局影響に注目(薬事日報・社説)

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