
島田社長
大洋薬品工業の島田誠社長は26日、本紙の取材に対して、今年3月に承認規格外製品を出荷した問題等を受け、「品質保証体制を最重点に取り組みたい」と語った。また、今後の事業展開としては、従来の品揃え型から、ジェネリック(GE)抗癌剤など「スペシャリティー」品目に、製品戦略を転換する考えを示した。
高山工場が業務停止処分を受けた4月以降、島田氏は自ら再発防止委員長として対策に取り組んできた。その中で、「GMP法令遵守」と「企業風土や体質」に問題があったことが明らかになってきているという。そのため、GMP問題については、「高山、春日部両工場の品質保証体制が、将来にわたって確保でき、GE薬メーカ-としてのポジションを勝ち得るために、外部人材を導入して、生産設備や人員配置の改革を進めている」と現状を話した。
実際、同社は4月以降、積極的な営業活動を控え、品質保証への改善策について、情報提供活動を展開。5月、11月の追補承認申請も断念した。島田氏は「そこでの市場評価が、社長として舵取りを行う上で大きな課題。社会との距離感を縮めるという作業が第1番の仕事」と強調。「既存品の品質保証体制の強化を、最優先して取り組んでいきたい」とした。
また、今回の不祥事が、「将来的な企業のあり方に影を落としたことは事実。社員のモチベーションもしかり、社会の見方も、こうした処分を受けた中でどのように企業像を変えていくかが、社会から問われているところ。その自覚と責任は、私だけではなく全社員に理解させていくことが今の私の仕事」とした。
一方、同社はこれまで、自社品、受託品合わせて約900に及ぶ製造品目数を強みに、「ワンストップ」の企業戦略を展開してきた。しかし今後は、品揃え型からチェンジし、GE抗癌剤など「スペシャリティ」に、製品戦略を転換していく考えを示した。既に今年4月から、専門部隊となる学術企画部を設置。高度医療機関や各種学会のオピニオンリーダ-に、市場ニーズをリサーチし、先発品の剤形や規格などの課題を収集。「市場の声を製品企画に反映させていく」取り組みをスタートさせているという。
また、売上の3分の1を占める受託事業については、「設備投資も相当行っており、新薬メーカーの受託は、今後も踏襲していくが、開発品目についての小分け導出は縮小していく」とした。その上で、自社売りを強化し、ハード面の開発投資も最優先で取り組んでいく考えを示した。
今後、GE薬企業としての存続に向けた企業アライアンスについては「考えなければならない」と述べた。特に日本市場に参入する外資GE薬メーカーについて、「日本市場では、ほとんどが目標は未達成。そうした企業とアライアンスを行うことで、大洋薬品の社会的価値が上がるという認識に立てば、すぐにできる体制は考えたい」と含みを残した。