第57回日本薬剤師会学術大会
ウィーメックスは、薬剤師の業務効率化・薬歴入力時間の削減に貢献すべく、昨年から生成AI「ChatGPT」と音声認識AIを搭載した薬歴入力支援システムの開発を進めている。今年5月からはツルハドラッグの一部店舗においてトライアル利用を実施。実際に店舗で利用した薬剤師から各種機能に対する要望を収集し、年内の発売に向けてさらなる改良点を探る。

薬剤師が薬歴の入力業務にかける時間は、厚生労働省の「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」によると1日当たり約1時間25分と言われており、対物から対人業務への転換が求められている薬局・薬剤師にとって大きなハードルの1つとなっている。また薬局の開局時間中は、患者対応・服薬指導・疑義照会・不足薬剤発注などの業務に追われ、薬歴記載は閉局後となるケースも多く、薬剤師の残業時間の増加も指摘されている。
こうした課題の解決に向けて今回トライアル利用を行う「薬歴入力支援システム」では、[1]Webブラウザより薬歴入力支援システムにログイン[2]服薬指導時の会話を録音[3]録音データを音声認識AIがテキスト化し、生成AIによりSOAP形式に変改・表示[4]表示内容を確認し、薬歴システムにコピー&ペーストで転記――という流れで薬歴入力の手間と時間を大幅に削減する。対面・オンライン問わず、いつもと同じ服薬指導を行うだけで、SOAP形式でのテキスト表示が可能となっており、また服薬指導ごとにデータが蓄積されるため、時間があるときに確認・編集・薬歴への転記作業もできる。昨年秋に実施した社内検証では、1件の薬歴入力にかかる時間が薬剤種類数6種未満の場合で平均1.5分(通常3.9分→61.5%削減)、6種以上の多剤調剤時で平均2分(通常6.3分→68.3%削減)と、大幅な削減を記録したという。
今時点では利用中の薬歴システムにコピー&ペーストで情報を転記する仕様となっているが、今後の機能拡張としてウィーメックスの電子薬歴と連携し、より簡単な薬歴入力を可能にするバージョンも開発している。
また服薬指導の情報は、3省2ガイドラインに準拠した高セキュリティーの国内サーバーで管理しており、薬局を含む医療機関に対してサイバーセキュリティー対策が義務づけられる中で、安心して使用できる。
ツルハホールディングスの中期経営計画では「臨床から臨生へ」という“治療からケアへ”を意味するスローガンを掲げており、「対物から対人へ」の進化が求められる薬局業界において薬局薬剤師の業務を「ケアに向けて開く」ことを目指している。同社GR調剤戦略部長の立石大介氏は今回のトライアルに関して「この新システムは単なる作業効率化だけでなく、薬歴の中にある非定型データをアセットとして活用することで、真の意味でのEBM、SDMの実践、多職種連携やかかりつけ職能発揮のためのコパイロットとなる」と確信している。