
2009年改正薬事法の完全施行後、順次移行期をこなし、OTC医薬品販売制度改正の定着が期待された10年であったが、新販売制度が求める対面販売の徹底に向けた外形整備すら、完全には行われていないことが、店頭覆面調査により明らかになる一方、昨年大きな騒動となった新型インフルエンザの鎮静と、春先の花粉の飛散がそれほどではなかったことなどもあり、OTC医薬品の売上の回復には厳しいものがあった。
特に第1類医薬品については、引き続き取扱店舗数の回復には至っておらず、第1類医薬品に傾注する企業にとっては、相変わらず厳しい業績となった。そのような中で、店舗ごとの売上を見ると、徐々に上昇を見せており、第1類医薬品を代表するスイッチOTC医薬品の品揃えが、新規品目の参入などで増加していることなども、力となっているとも考えられ、今後とも期待される。
第1類医薬品の一部は、先の法改正時に暫定的に第1類と区分されたものであり、まず抗アレルギー薬の点鼻薬が第1号として、薬事・食品衛生審議会で見直しがなされ、第2類医薬品に区分替えされた。今年においても、順次調査・審議が行われ、漫然と第1類にとどめ置かれるのではなく、市販後調査成績をはじめとした、根拠に基づいた区分の見直しが行われた。これにより、生活者の商品選択の幅が広げられ、登録販売者が取り扱える品目が拡充したこととなる。
このように、登録販売者が取り組むべき範囲が日進月歩となっていることから、登録取得までの学習・研鑽のみならず、登録販売者としての登録後も、生活者をサポートする専門家として、その知識や能力をさらに強化することが求められている。
スイッチに関しては、法改正と前後するように「スイッチ化スキーム」が示され、日本薬学会が候補品目リストを提示し、日本医学会傘下の専門学会の意見を提出し、さらに薬事・食品衛生審議会において検討がなされることとなり、今年も同様の取り組みがなされた。
今年は、第1回候補品目提示において取り上げられ、審議を継続するとされた血圧や血糖の異常に係る品目が再度取り上げられ、薬局・ドラッグストアにおける薬剤師の関わりなどを含めた丁寧な資料が添付され、その審議が注目された。誠に残念ながら、部会での審議では、それらのメタボ対策につながる品目については再度継続とされた。
しかしながら、抗アレルギー薬をはじめとして、スイッチ化を可とする品目も認められた。さらに、「スイッチ化スキーム」と並行して示された「ハーブ等の取り扱い」により、西欧等で汎用されるハーブ製品が、OTC薬として登場することが期待されていたが、ついにその第1号が承認の運びとなった。
このように、生活者のニーズに応える新たなOTC医薬品の登場に向けた動きは停滞することなく、脈々と動いており、今後とも、この動きがさらに進むことが期待される。
世界のOTC医薬品市場を見る時、日本をはじめとしたアジア太平洋地域を一塊にした時に、欧米に匹敵する大きな市場が浮かび上がる。つまり、欧州、北米、アジア太平洋、そしてその他の四つの市場で世界をほぼ4等分し、とりわけアジア太平洋地域、ラテンアメリカ、および中東欧地域におけるOTC医薬品市場の伸びが大きい。
以前から取り組まれてきたアジア太平洋地域における公的地域団体形成の取り組みは、今年11月に台北で開催された第8回WSMIアジア太平洋地域会合において、「アジア太平洋セルフメディケーション協会(APSMI)」として、結実した。
この組織は、アジア太平洋地域の各国(地域)協会の参加により、地域のセルフメディケーション振興に向け、「官」に対する民意の反映、生活者のセルフメディケーション理解および活用の振興、それらの基礎となる情報の収集と相互理解――などを推し進めようとするものであり、その趣旨に賛同した日本(JSMI)、中国(CNMA)、韓国(KPMA)、台湾(TPMMA)およびタイ(TSMIA)の5協会と、それを支援しようとする主要企業の参加により形成されたものである。
初代会長には、WSMIのアジア太平洋地域担当副会長を務める佐藤誠一氏(佐藤製薬社長、JSMI副会長)が、事務総長にはJSMI特別顧問の田頭恭博氏が選任された。
まずは、2年後の総会に向けて、加盟協会と協力して、域内のニーズを調査取りまとめ、具体的な活動案を早急に合意できるよう取りまとめることが求められている。この活動に対しては、厚生労働省ならびに経済産業省からも応援の意向が示されている。
国内外とも、Responsible Self-Medicationの実現には、長く険しい道のりがあるものと目されるが、一方で努力が報われることも明らかとなっており、生活者の役に立つOTC医薬品がますます発展することを期待したい。