「平成」の時代がいよいよ幕を閉じ、来月1日の新天皇即位と同時に新たな元号「令和」がスタートする。外務省では英語説明を「Beautiful Harmony(美しい調和)」と表現するなど、国内外で「令和」への関心が高まっている。最近は、報道各社が平成を特集記事などで振り返っており時代の節目を感じる。
「平成」の31年間で、劇的に変化したと痛感するのはICT(情報通信技術)の発達だろう。当たり前のように使われているスマートフォンやパソコンは平成初期には存在しなかった。今はインターネットを介し、相当量の情報を送受信でき、格段な業務効率化につながっている
翻って、平成の薬局薬剤師を取り巻く環境変化はどうであったか。平成最大の動きで言えば、医薬分業の進展に尽きるだろう。平成元年当初、全国平均11%ほどだった処方箋受け取り率は30年を経過した現在、約73%にまで伸長している。医薬分業は、当初から医療機関における薬価差益が処方インセンティブにつながるといった問題を解消するため、厚生労働省の政策誘導で進められてきた背景がある。
このため、診療所から大病院まで、「マンツーマン薬局」や「門前薬局」と呼称される世界的にも類を見ない異形態の薬局が乱立した。さらに近年では、こうした現象を「調剤バブル」と揶揄され、医薬分業バッシングにまで発展している。
ある薬局経営者は、「クリニカルファーマシストとしての臨床薬剤師が育っていないところに、医薬分業が進んできたことが一番の問題。薬剤師の医療人としての倫理、使命や責任感の欠如、知識や臨床経験不足のために医師や患者からの満足が得られず、国民からの高い評価、さらには薬物療法の有効性、安全性、経済性の部分でも十分期待に応えることができなかったのではないか」との見方を示しており、今後への期待も込めて「平成時代の医薬分業は、日本型医薬分業の始まりと終焉」と振り返っていた。
2006年から臨床現場で、より実践的な対応ができる薬剤師を養成する薬学6年制がスタート。12年に輩出された第1期生は、今年30歳となり、薬剤師として働き盛りの年代に突入する。時を同じくして、今通常国会に提出された改正医薬品医療機器等法案では、薬局の機能別認証制度の導入や、服薬期間中の患者フォローを薬剤師に義務づけることなどが盛り込まれている。さらに、他の医療職との連携強化、オンライン服薬指導などのICTを活用した取り組みも視野に入っている。
平成の時代に生まれ育った薬剤師が、この医薬分業が定着した時代に、薬局薬剤師としてどのように手腕を発揮していくのか、新たな令和時代の薬剤師の活躍にも注目していきたい。