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【日本薬学会第142年会】奨励賞受賞研究 精密設計分子触媒を用いる高選択的アルコール酸化反応の開発

2022年03月23日 (水)

東北大学大学院薬学研究科講師 笹野 裕介

笹野裕介氏

 近年、医薬品の分子構造が複雑化している。そのため、医薬品合成を支える有機合成化学には、多官能基性化合物の変換したい官能基だけを変換する、化学選択的反応の開発が求められている。また、医薬品の不斉合成を支援する新たなエナンチオ選択的反応の開発も求められている。

 医薬品の精密合成で用いられる多様な反応の中で、アルコールの酸化反応は、カルボニル化合物を与える有用な反応である。これまでに多数の手法が報告されているが、われわれが本研究を始めた当時、無保護のアミノ基共存下にアルコールを化学選択的に酸化する一般性の高い手法は報告されていなかった。われわれは、アザアダマンタン型ニトロキシルラジカルAZADOと金属塩の協奏触媒という独自の分子触媒系を用いて本問題の解決を図った。

図

 検討の結果、AZADOと銅塩の協奏触媒が、常温で常圧空気中の酸素を酸化剤として用いる穏和な条件で、第三級から第一級アミンを含む種々の官能基を許容し、良好から高い収率でアミノカルボニル化合物を与えることを見出した。

 さらに、本反応をいくつかのアルカロイドの合成に適用し、その有用性を実証した。また、AZADO/銅触媒的アルコール空気酸化反応は、スルフィドやジチアン等の二価硫黄官能基の共存を許容し、高収率でカルボニル化合物を与えることを明らかにした。

 続いてわれわれは、AZADO/銅協奏触媒を不斉触媒へと展開した。AZADOにキラルオキサゾリンを共有結合で連結した独自の多座配位型触媒を新規に設計・合成し、ラセミ第二級アルコールの空気酸化的速度論的分割に適用した。本反応は、種々の酸化反応に不安定な官能基の共存を許容し、様々な環状アルコールを高い反応速度比で分割した。

 われわれは上述の研究に並行して、ニトロキシルラジカル類縁体の酸化触媒探索にも取り組んでいる。

 今後も、新しい触媒または触媒システムを追究して、有機化学反応における「選択性」の問題を解決し、精密有機合成化学の革新に貢献していきたい。



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