富士通は9月15日、量子アプリケーション開発ソフトウェア「Open Quantum Application Research Package」[OpenQARP(code name)]をオープンソースソフトウェアとして、グローバルで一般公開を開始した。同ソフトウェアでは、同社独自の量子アルゴリズムを含む100種類以上のソフトウェア部品が利用可能で、これらを組み合わせることで量子アプリケーション開発の大幅な効率化が期待できる。また、一般公開に先駆けて、他社との共同研究やQuantum Simulator Challengeを通して、同ソフトウェアのβ版を2月から80団体以上に提供しており、既に多くの量子アプリケーションの研究開発成果の創出に活用されている。
同ソフトウエアの特長は、汎用的なソフトウエア部品の提供により実装作業の効率化が図れることが挙げられる。量子アプリケーション開発で汎用的に用いられる処理を、量子状態準備やパラメータ付き量子回路の構成要素から量子フーリエ変換まで、組み合わせて利用できる70種類以上のビルディングブロックを提供する。また、これらのビルディングブロックを用いて構成された20種類以上の実行可能なアルゴリズムを提供する。
これには、Subspace-Search Variational Quantum EigensolverというNoisy Intermediate-Scale Quantumデバイス向けのアルゴリズムや、量子位相推定といったFault Tolerant Quantum Computing向けのアルゴリズムが含まれている。利用者は、これらの部品を目的に応じて組み合わせ、量子アプリケーション開発を行うことで、ソフトウェアの実装工数の抑制につなげられる。
同社も同ソフトウェアの社内実践を積極的に行い、その成果を公開している。例えば、分子の電子状態を計算する量子化学アプリケーションの研究開発において、効率的な計算を可能にするADAPT-VQEアルゴリズムを使った処理を実装する際にPythonで約130行が必要になるところを、同ソフトウェアの部品を使用することにより、約40行に削減できた実績がありる。これにより、量子アルゴリズムの実装負担を大幅に軽減し、研究者がアルゴリズムやアプリケーションの検証に注力できるようになる。
また、同社独自の先端アルゴリズムの提供により効率的な量子計算を実現している。量子化学計算における量子回路の初期状態準備に必要な量子ゲート層の数(回路深さ)を削減可能な、古典コンピュータによる事前計算の結果を活用したUnitary pair Coupled Cluster Doublesアルゴリズムや、量子位相推定に必要となる複雑な入力状態の準備負担を軽減し、エネルギースペクトルに関する情報を効率的に取得するDensity of States Quantum Phase Estimationなど、同社独自の量子アルゴリズムも部品として提供する。
さらに、一般的なPCからGPU搭載システム、スーパーコンピュータなどの様々な実行環境への対応している。同ソフトウエアは、Pythonが動作する一般的なPC環境に容易にインストールして、誰でも利用できる。また、ソースコードからビルドすることで、バックエンドとしてNVIDIAのCUDA-Qと連携でき、オープンなGPUアクセラレーション環境における量子回路実行が可能となっている。さらに、同ソフトウェアは同社が所有するプロセッサ「A64FX」を搭載したスーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX700」1024機で構成される40量子ビットの状態ベクトル型の量子シミュレータ環境でも利用できる。これまでにQuantum Simulator Challengeを通して80団体以上にこのスーパーコンピュータ環境を提供し、先行提供した本ソフトウェアのβ版で様々な量子計算が実行された実績がある。
また今後、同社が研究を推進する量子計算アーキテクチャ「STARアーキテクチャ」を想定したシミュレーション環境なども順次対応する予定となっている。
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