昨年12月20日、薬価制度を抜本改革する基本方針が決定した。抗癌剤オプジーボに端を発した高額薬剤の問題は、経済財政諮問会議へと場を移して薬価制度の抜本改革へ向けた議論へと発展、加速した。
諮問会議が強気の姿勢で抜本改革案を提示したが、特に薬価制度運用上の中核部分に位置づけられる毎年改定に対し、中央社会保険医療協議会、日本医師会、日本薬剤師会、製薬と卸関係団体など、まさに薬業界全体が一斉に反対意見を表明した。
政府は「全品目」「毎年改定」に固執し、ついには安倍首相が乗り出して年内決着を指示する事態となった。結局、業界が反対する意向は押し切られて、運命の20日、麻生太郎財務大臣、塩崎恭久厚生労働大臣、石原伸晃経済再生担当大臣、そして菅義偉官房長官の4閣僚によって、その名の通り経済・財政ありきの感が否めない政府主導の基本方針が決定した。
内容は、[1]全品目の薬価改定を毎年実施[2]通常改定のない年も大手卸等に価格調査を実施[3]市場実勢価格と乖離が大きい品目の薬価見直しを2019年度から実施[4]効能追加等による市場拡大への対応として薬価収載の機会を活用して年4回薬価を見直す[5]新薬創出加算の抜本改革を行い、真に有効な薬を見極めてイノベーションを評価する方針――などとなっている。
塩崎厚労相は、「国民皆保険の持続性、イノベーションの推進を両立し、国民負担軽減、医療の質向上を目指す」という四つの原則を強調した。毎年改定に対する各方面からの懸念に対しては、「この大きな原則を基本としていけば、懸念は解消されるのではないか」との認識を示した。詳しい経緯や内容は、本紙1月1日号「時の話題」8、9面に掲載されているので、一読されたい。
世界でも類い希な日本の国民皆保険制度は、医療機関へフリーアクセスでき、全国ほぼ同水準の医療サービスが提供され、しかも一部負担の安価で受療可能という体制が確立されてきた。
施行が1961年であるから、基本の制度設計はそれより数年前に行われていたことになる。昭和30年代初頭であるから、もはや戦後ではないが約60年も前の話だ。いく度かの改正、一部負担率のアップを重ね、なんとか制度を維持してきた。
当時、想定していなかったであろう少子高齢社会を迎え、この制度を持続させていくとなれば、当然、財源問題に突き当たる。財政は重要なテーマだが、医療にとっては治療して患者の命を守ることが大前提にある。薬価制度によって公定価がある薬も単なる一般市場における商材ではない。
今回決まった基本方針に沿って、今年から本格的な議論と検証に突入する。四つの原則を貫き、新たな時代の薬価制度の構築に向けて慎重かつ真摯に議論が進められることを願う。