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【DDSの現状と展開】第8回 「医療現場で活躍するDDS製剤」

2009年6月5日 (金)

1.はじめに

 前回はエコ技術としてのDDSについてお話しました。

 今回は医療現場で活躍するDDS製剤についてお話します。

 DDS技術は「放出制御」と「ターゲティング」が中心(経口薬の場合には吸収改善もあります)であるとお話しました。医療現場でのDDS応用例はたくさんありますが今回は私共の医薬開発品を例に取り上げてお話したいと思います。

2.医療現場で活躍するDDS製剤

1)放出制御されたDDS製剤

 注射剤に関するDDS技術は放出制御とターゲティングが中心です。放出制御の例として当社が好中球(白血球の一種)減少症治療薬として開発中の徐放性G-CSF製剤(開発コード名:SRG)があります。従来製剤では毎日皮下注射しなければならない治療をSRGでは1回皮下注射すると1週間効果が持続するため、注射のために頻繁に通院する必要のなくなることが期待されている製剤です。たとえば、乳がんの手術後に化学療法等の治療を継続している患者さんで白血球数が減少している患者さんはG-CSFの注射を受けるために毎日の通院を余儀なくされています。このような患者さん達にSRGを投与すれば週に1回だけの来院でよいことになり患者さんの日常生活の質(QOL)が向上することが期待されます。

2)ターゲティング機能があるDDS製剤

 ターゲティングの例としては、既に病院で治療に使われているリポPGE1製剤(商品名:「パルクス」、「リプル」)があります。第1世代のプロスタグランディンE1製剤と呼ばれています。プロスタグランディンE1は生体成分ですが一般に効果を発揮する時間が短く、不安定な化合物です。またそのままでは作用して欲しいところに集まってくれません。リポ化したことにより、パルクス、リプルは炎症のある部位に集まる性質が付加され、広く末梢動脈の虚血性疾患治療に貢献した製剤で、現在でも数百億円の売上げがある製剤です。

 プロスタグランジンE1(PGE1)封入ナノ粒子製剤

 製剤の発明者は水島裕らであり、200nmの微粒子の中に末梢血管障害に有効なPGE1を封入したものである(図1)。この粒子は図2に示したように障害血管部位にターゲットされるので、微量投与で有効、それゆえ全身性副作用が少ないのが特徴。図2の上図はラットの障害血管部位にナノ粒子が血管腔から取り込まれていることを示す電子顕微鏡像。下図は正常血管で、ナノ粒子は取り込まれていない。

プロスタグランジンE1(PGE1)封入ナノ粒子製剤

プロスタグランジンE1(PGE1)封入ナノ粒子製剤

3)DDS技術の組み合わせたDDS製剤

 このターゲティングの特徴に放出制御の性質を合わせ持たせた製剤としてはナノPGE1製剤があります。この製剤は第3世代のプロスタグランディンE1と呼ばれる製剤で1回静脈内投与すると、まず患部に集まる性質を持ち(ターゲティング)、かつ患部に留まり、1週間にわたってPGE1を放出し(放出制御)効果が持続します。基礎研究段階ですが数年後にはヒトでの臨床試験を開始できる予定です。

ナノステロイド、ナノPGE1の作製とその構造

ナノステロイド、ナノPGE1の作製とその構造

 一方、第2世代のプロスタグランディンE1製剤としてはリポ化(ターゲティング)+プロドラッグした製剤であるAS-013があります。通常は吸収改善に用いるプロドラッグ手法を使ってターゲティング。徐放化に加えて化合物の安定化を発揮する特長を有します。このように各種DDSの手法を化合物の特性や欠点と組み合わせて使うことにより、いろいろな特徴を持った新規医薬品の開発が可能になります。プロスタグランディンE1製剤は温度に対して不安定ですので室温管理が好まれる中国やインドでの開発が期待されています。この製剤は今年から申請を目差した開発を再スタートする予定です。

3.日本で実用化されたDDS製剤

 DDS技術を応用して日本で実用化されたDDS製剤を以下に掲載します。

rensai_dds_16 rensai_dds_17

4.DDS技術の応用が期待される領域

 DDS技術の応用が期待されている領域があります。この中で特に応用が期待されるのは遺伝子治療のデコイ型核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチドやRNAi(RNA interference、RNA干渉)の核酸医薬領域で実用化が熱望されています。DDSをコア技術とした創薬事業を展開する当社はこれらの重要な領域での応用を目差します。

5.おわりに

 今回は医療現場で活躍するDDS製剤について述べました。まだ未解決の領域があることや、今回紙面の都合で割愛した、DDS薬剤やDDS技術と医療機器との組み合わせで新たな治療システムを構築する試みも進んでおり、DDS技術の更なる発展の場として注目されています。

 次回(連載第9回)は、「DDSの医療以外への応用」を取り上げます。

連載 DDSの現状と展開




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