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【DDSの現状と展開】第5回 DDSとバイオ製剤(2) ―ターゲット・徐放製剤の作製技術―

2009年3月19日 (木)

1.はじめに

 前回は、活性たん白をPEGやレシチンで化学修飾して血中濃度の持続性、あるいは病変部位へのターゲッティング性を高めるDDS技術を紹介しました。ターゲッティングには第2回でも述べましたように抗体やリガンドとの結合による能動的ターゲッティングやリポソーム、高分子ミセルに薬物を包み込んだ受動的ターゲッティングなどが、徐放化にはゼラチンやコラーゲンなどの生分解性ポリマー等を利用する技術が多く研究されています。今回はLTTバイオファーマで開発してきた品目を中心にターゲッティング、徐放化の技術を紹介します。

2.ターゲット・徐放製剤の作製技術

1)エクラプロスト ―リポ製剤(開発名AS-013)

 エクラプロストはプロスタグランディンE1(PGE1)をエステル化によりプロドラッグ(体内で代謝されて薬効を示す形になる薬物)化したもので元のPGE1よりも大幅に安定性が改善されています。 AS-013は図1のように大豆油に溶けた原薬を卵黄レシチンで被覆しナノ粒子としたものです。これにより病変部位へのターゲッティングが大きく改善されました。AS-013は現在Ph?が終了した段階です。当社のこのナノ粒子化技術はすでにPGE1に使われ商品名パルクス(大正製薬)、リプル(田辺三菱製薬)として販売され主として末梢動脈閉塞症の改善に医療現場で活用されています。                

図1.ナノ粒子製剤
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2)ナノステロイド、ナノPGE1

 LTTバイオファーマは上記リポ製剤とは異なる、ステロイド、PGE1の徐放性、ターゲット性、ステルス性(異物として認識・分解されにくい性質)を持たせるナノ粒子製剤技術を開発しました。ステロイドは有効な医薬品である反面、毒性も強くターゲット性を高めれば副作用の軽減が望めます。一方、薬効の持続性が短いPGE1は徐放性が維持できれば毎日の投与が不要となり、患者さんの負担が軽減されます。安全性の高いポリ乳酸(PLA)とポリ乳酸”ポリエチレングリコール(PLA-PEG)ブロックポリマーおよび亜鉛等金属イオンを使用して図2のように薬物を包み込んだ粒径500200nmのナノ粒子です。粒子径や外部に出ているPEG鎖でターゲット性、ステルス性が最適化され、ポリマーの比率で持続性の最適化が可能です。これらの製剤は動物での有効性が証明されつつあります。

図2.PGE1、ステロイドのナノDDS製剤
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3)G-CSF徐放製剤(開発名SRG)

 好中球減少症の治療薬としてがん化学療法などの際にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は世界で広く使われています。しかしG-CSFは一般の薬剤と同様に投与後血中濃度が持続しないため、治療開始時は507日間毎日投与が必要です。LTTバイオファーマは炭酸塩、亜鉛塩とリン酸塩およびG-CSFの適切な混合比のときに約400nmの不溶性粒子となり高率にG-CSFが取り込まれ、皮下注で投与したときに有効な血中濃度が7日前後持続する徐放製剤を開発しました(図3)。G-CSFの持続製剤としてPEG修飾したPEG-G-CSFが海外で販売されていますが、当社の徐放製剤はPEG化の短所(活性低下による投与量増加、免疫原性の懸念)を克服するものと考えています。 

図3. G-CSF徐放製剤製造フロー
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4)INF-α徐放製剤

 インターフェロンα(INF-α)はC型肝炎の特効薬であり世界で広く使われています。INF-αも加療中は毎日投与することが必要ですが、徐放化で血中濃度が維持できれば投与頻度が軽減でき、患者のQOLが向上すると考えられます。当社では図4のように骨の主成分であるヒドロキシアパタイトの誘導体(HAp-Zn 平均粒径8μm)にINF-αを取り込ませ、PLA-PEG-PLAブロックポリマーで表面を被覆することでINF-α徐放製剤を開発中です。この徐放製剤は免疫抑制ラットで2週間以上血中濃度が持続することが確認されました。現在製剤化の最適化を検討中ですが、INF-α以外の薬剤にも応用できると期待されています。

図4.INFα徐放製剤
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3.おわりに

 DDSの大きな目的には有用な薬物を「必要なところへ、必要な量を、必要な時間だけ」届けることにあります。患部の薬物濃度を適切なレベルに維持することにより治療効果の向上が期待でき、患部以外の正常な組織や細胞へ悪影響が起こることを少なくして副作用の軽減が望めます。次回(連載第6回)は「DDSとがん治療」を取り上げます。

連載 DDSの現状と展開




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