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【DDSの現状と展開】第7回 「エコ技術としてのDDS」

2009年5月12日 (火)

1.はじめに

 前回はDDS技術の医療分野、特にがん治療への応用例についてお話しました

 今回から2回に亘って環境や医療分野でのDDSについてお話します。

 これから10年20年先を見据えると環境に対する応用が重要になることは誰でも認めていただけることと思います。このエコ技術にもDDSは応用されています。

2.エコ技術としてのDDS

1)薬剤の排泄と環境

 薬の開発に関してその薬剤の動態を知るために吸収・分布・代謝・排泄の研究が行われます。たとえば錠剤として飲んだ薬が、主に腸管から吸収されて体内に入り、そのものまたは活性化されて効果を発揮します。患部で効果を発揮した薬は主に肝臓で代謝され、腎臓から尿となりまたは腸管から糞便となり(ものによっては呼気中から)排泄されます。

 患者さんから排泄された薬剤またはその代謝物は消えてしまうわけではなく、汚水処理場で処理された上で川や海に流されていきます。現在、環境ホルモンによる生態系のかく乱が議論されていますが、単に合成化学品だけでなく医薬品についても同じことが言えるでしょう。

 DDS技術は薬物を効かせたい場所で(ターゲティング)効率よく有効性を発揮させるので総投与量が減らせます。また、効果を発揮する時間を延ばすことで(放出制御)結果的に少量で長い期間効果を発揮させることが出来ます。

 実例を示しますと、G-CSFという好中球(白血球の一種)を増やす薬剤があります。この薬剤は白血病や乳癌などで制癌剤を投与したことによる白血球減少に悩む患者さんに投与しますが、G-CSFの従来製剤で毎日150μgを7日間投与すると総量1,050μgとなります。この薬剤をDDS製剤にすれば1回300μgの投与で1週間効果が期待され総量は29%で済みます。これがDDS技術です。投与量が少なければ患者さんの体への負担(例えば副作用のようなもの)が少なく、かつ排泄された後の環境への影響も少ないと言えます。

2)DDS製剤の開発

 さらにDDS製剤の開発に焦点を絞れば、もともとの薬剤が薬として既に承認され患者さんに投与されている場合が多く、数多くの患者に投与され薬剤としての安全性が確立されている場合には、開発に際しては動物での安全性が予見され、動物試験を簡略化したり省略できる場合もあります。ヒトを用いて安全性と有効性を検討する臨床試験においても簡略化したり省略することも可能です。現在新薬を1品目発売するまでの総開発コストは日本で500億円と言われていますが、DDS技術を活用すれば、製薬会社にとっては開発経費の節減につながる利点があります。実はもっと重要なことは、無駄に実験動物を犠牲にせず、新薬の開発期間が短くなり、治療を望んでいる患者さんに早く届けることが出来る利点が大きいのです。

 実験動物に関して、通常一つの新薬開発のために数多くのネズミを使用した試験(マウス1,000匹以上、ラット1,000匹以上)を実施しています。

 具体的に開発期間を下図に示しますと、一般に新薬は基礎段階(探索研究と非臨床・動物試験)8年と臨床段階7年で計15年程度開発期間を要します。これに対してDDS製剤の場合には、基礎段階5年と臨床段階3年で計8年になります。現在市販されており約300億円程度の市場を形成するリポPGE1という薬(大正製薬:パルクス、田辺三菱製薬:リプル)では計7年という短期間で発売されました。

新薬が生まれるまでのプロセス

新薬が生まれるまでのプロセス

3.終わりに

 DDS技術は、薬物の薬効を高め、副作用を軽減する製剤技術であるばかりでなく、今回ご説明したように医薬品の開発においても以下の3点の特徴を持つエコロジーな技術といえます。

①無駄に動物を殺さない ②過剰な数の患者さんで治験をしない ③早い時期に患者さんに使用してもらえる。

次回(連載第8回)は「医療現場で活躍するDDS製剤」について取り上げます。

連載 DDSの現状と展開




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