C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が市場に流通した問題をめぐり、厚生労働省は1日、流通ルートをほぼ解明し、偽造薬を調剤された患者が服用していないことや、分析の結果、偽造品はビタミン剤や、C型肝炎治療薬「ソバルディ」と漢方薬を混入させたものだったことなどを明らかにした。
厚労省は、薬事監視の観点から実施した調査は終了したと判断。今後は警察当局の捜査に委ねる考えを示している。
今回の事件では、薬局で偽造薬が調剤され、患者の手に渡ってしまった。最後の砦である薬局・薬剤師のチェック機能が働かなかったことは大いに悔やまれるところだ。
厚労省の森和彦大臣官房審議官(医薬担当)も3日の「医薬分業指導者協議会」のあいさつで「深刻な問題」と指摘し、関係者が協力して「失った信頼の回復に努める」よう求めた。
偽造薬の問題をめぐって、怒り心頭なのは日本薬剤師会の山本信夫会長だ。一昨年の薬歴未記載問題に続き、診療報酬改定を控えたタイミングで事件が起こったことや、医薬品を安く仕入れたリスクを患者が負う危険性もあっただけに、怒りたくなる気持ちは理解できる。
ただ、患者からすれば同じ薬局であり薬剤師だ。「仲間と認めない」などと、国交を断絶していたのでは、物事は良い方向に進んでいかない。薬剤師を代表する団体の悲しい“性”だとは認めたくないかも知れないが、業界全体で再発防止に取り組む姿勢を見せることも大事だろう。
そもそも今回の事件は、医薬品というモノに対する意識の低さが引き起こしたと言っても過言ではないのではないだろうか。
もちろん、日本で偽造薬は流通しないという慢心もあったとは思うが、対人業務に力を入れようとするがあまり、安全な医薬品を仕入れるということも含めた対物業務が疎かになっていたのではないか。
確かに、2015年に厚労省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では、「対物業務から対人業務へ」というキーワードを掲げているし、ビジョンを踏まえ、16年度診療報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」も新設された。
しかし、対人業務は対物業務がしっかり行われている状況で成立するものだ。
いまこそ、薬剤師法第I条の「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」という原点に立ち返り、改めて、対物業務の再点検を行うことを求めたい。
今回の一件を「関西メディコが単独で起こした問題」で終わらせるのではなく、薬剤師共通の問題として捉え、職能の足固めをする良い機会にしてもらいたい。