在宅薬学総合体制加算は、2024年度の調剤報酬改定で新設された加算です。2026年度(令和8年度)調剤報酬改定では、在宅薬学総合体制加算1が15点から30点へ引き上げられました。さらに同加算2は、イ(個人宅)が100点へ倍増する一方、ロ(施設等)は50点に据え置かれています。
本記事では2026年度改定の内容に基づき、在宅薬学総合体制加算の算定要件や施設基準、疑義解釈を解説します。
※本記事は、2026年8月4日現在の情報をもとに記載しています。
在宅薬学総合体制加算とは?
在宅薬学総合体制加算とは、薬局が在宅患者に継続的に対応するための体制を持っているかを評価したうえで、調剤基本料に上乗せされる加算です。在宅業務の推進に向け、2024年度改定でターミナルケアや小児在宅医療に対応した訪問薬剤管理指導の体制を整備している薬局を評価するものとして新設されました。
同加算は、在宅患者に対する薬学的管理・指導を行うために必要な体制を評価する「体制加算」と位置付けられています。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
26年度診療報酬改定解説[9]‐在総加算2は個人在宅手厚く|薬事日報
2026年度改定の変更点
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 在宅薬学総合体制加算1 | 15点 | 30点 |
| 在宅薬学総合体制加算2 イ(個人宅) | 50点(区分なし) | 100点(新設) |
| 在宅薬学総合体制加算2 ロ(施設等) | 50点(区分なし) | 50点 |
2026年度改定で最も大きく変更されたのは、個人宅と施設等の評価が区分された点です。加算2については、単一建物診療患者が1人または単一建物居住者が1人の場合をイとし、100点が新設されました。それ以外の訪問薬剤指導時はロとなり、50点で据え置きです。
一方、がん末期などターミナルケア患者に対する体制要件として求めていた「無菌室、クリーンベンチまたは安全キャビネットの整備」は撤廃されています。
中央社会保険医療協議会での議論では、加算2を届け出て無菌調剤設備を持つ薬局のうち、直近1年間の無菌製剤処理加算の算定割合が34.5%にとどまっている実態が報告されました。これを踏まえ、設備要件ではなくプロセスやアウトカムを重視する評価へと見直されています。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
26年度診療報酬改定解説[9]‐在総加算2は個人在宅手厚く|薬事日報
加算1と2の違い
加算1と2の違いは、求められる実績と体制の水準にあります。加算1は基本的な在宅体制を評価する区分で、訪問薬剤管理指導を行う旨の届出や年48回以上の訪問実績などが要件です。
加算2は、加算1の施設基準をすべて満たすことが前提です。その上で個人宅等への訪問実績が問われるほか、下記のいずれかひとつを満たすことが求められます。
- 医療用麻薬の指導実績
- 無菌製剤処理加算の算定実績
- 小児在宅患者に対する体制
人員面では、常勤換算で3名以上の保険薬剤師の勤務が必要です。
加算2のハードルは高く、2024年度改定の結果検証調査では、在宅薬学総合体制加算の届出薬局のうち、加算2を届け出ているのは15.8%でした。具体的な施設基準は次章で紹介します。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について(事務連絡)|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
【24年度改定調査】「在宅体制加算2」算定16%‐小児在宅実績がハードル|薬事日報
在宅薬学総合体制加算の算定要件
在宅薬学総合体制加算の算定要件は、対象患者の要件と施設基準に分かれます。2026年度改定では加算2の対象患者が整理され、追加的措置も設けられました。
算定対象となる患者
在宅薬学総合体制加算1は、届出を行った保険薬局が以下の患者等が提出する処方箋を受け付けて調剤した場合に算定できます。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する患者
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定する患者
- 在宅患者緊急時等共同指導料を算定する患者
- 介護保険の居宅療養管理指導費または介護予防居宅療養管理指導費を算定する患者
一方、加算2は2026年(令和8年)5月29日付の一部訂正で対象が整理されました。算定対象は在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定する患者等に限られます。在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料や介護保険における居宅療養管理指導費などの記載は、この整理により削除されました。単一建物診療患者が1人または単一建物居住者が1人の場合はイ、それ以外はロを算定します。
別添3 調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について(事務連絡)|厚生労働省
在宅薬学総合体制加算1の施設基準
(1)在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出
(2)訪問薬剤管理指導の実績 48回以上/年※
(3)開局時間外における在宅業務対応(在宅協力薬局との連携含む)
(4)在宅業務実施体制に係る地域への周知
(5)在宅業務に関する研修(認知症・緩和医療・ターミナルケア)及び学会等への参加
(6)医療材料及び衛生材料の供給体制
(7)麻薬小売業者の免許の取得
(8)服薬管理指導料の「注1」に規定する服薬管理指導を行う旨の届出
※2026年度改定で24回以上から引き上げ。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
【26年度調剤報酬改定展望】「在総加算2」の行方焦点‐かかりつけ要件見直しも|薬事日報
在宅薬学総合体制加算2の施設基準
在宅薬学総合体制加算2の施設基準は、加算1に実績要件と人員要件を上乗せした構成です。
(1)加算1の施設基準を全て満たすこと
(2)ア又はイのいずれかを満たすこと
(3)ア、イ又はウの要件への適合
ア…訪問時の医療用麻薬に関する指導実績10回/年
イ…無菌製剤処理加算の算定実績1回/年
ウ…小児在宅患者に対する体制(在宅訪問薬剤管理指導等に係る小児特定加算及び乳幼児加算の算定回数の合計6回以上/年)
(4)常勤換算で3名以上の保険薬剤師が勤務しており、開局時間中は原則2名以上の薬剤師が常駐
(5)高度管理医療機器販売業の許可
加算2イの追加的措置
2026年度改定では、個人宅以外でも在宅薬学総合体制加算2のイを算定できる追加的措置が設けられました。高齢者施設等で重症度の高い患者に対応する薬局の取り組みが後退するのを防ぐ狙いです。
施設要件はふたつです。ひとつは、在宅薬学総合体制加算1を届け出ている保険薬局のうち、個人宅の患者に対する訪問薬剤管理指導または居宅療養管理指導に係る算定回数が、直近1年間で480回以上であることです。この場合、加算2の要件である「訪問薬剤指導の実績のうち、個人宅等の占める割合」は求められません。もうひとつは、在宅薬学総合体制加算2を届け出ている保険薬局であることです。
対象患者は、重症度の高い患者(別表第8の2)と包括的支援加算の対象患者(別表第8の3)です。前者には末期の悪性腫瘍や指定難病、在宅酸素療法を行っている状態などが含まれます。後者は要介護3以上に相当する状態や、週1回以上の訪問看護を受けている状態などです。
算定時は該当する施設要件と患者の状態を、調剤報酬明細書の摘要欄に記載します。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について(事務連絡)|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
【厚労省】在総加算2-イの算定緩和‐重症患者なら個人宅以外も|薬事日報
在宅薬学総合体制加算の疑義解釈
在宅薬学総合体制加算の疑義解釈では、届出時の周知手続きや、追加的措置の対象患者の考え方が示されています。これらは厚生労働省の「疑義解釈資料の送付について」で公表されました。実務で迷いやすい3点を取り上げます。
疑義解釈①:施設基準の周知に関する公表手続きについて
問1 地域支援体制加算、連携強化加算及び在宅薬学総合体制加算の施設基準において求められる薬局の機能等に係る情報の周知について、行政機関や薬剤師会等を通じた公表の手続を行っているが、これらの加算の届出時点では当該薬局の情報が公表されていない場合であっても届出を行うことは可能か。
(答) 届出要件を満たすために、保険薬局が所在する地域の行政機関や薬剤師会等に対して当該薬局が公表のための必要な手続きを行っており、情報が公表されることが担保されている場合には、届出時点で当該薬局の情報が公表されていなくても差し支えない。この場合、地域支援体制加算の届出にあたっては、上記内容が確認できる資料(例:公表のための手続を行ったメールの写し等)を添付すること。また、届出後においては、必要な情報が速やかに公表されていることを確認しておくこと。なお、「疑義解釈資料の送付について(その3)」(令和6年4月26日事務連絡)の別添5の問3のとおり、当該薬剤師会が会員のみを対象として当該情報を収集、整理し、公表している場合は、施設基準を満たさないことに留意すること。
公表の手続きを済ませ、公表が担保されていれば、届出時点で未公表でも差し支えないという整理です。ただし薬剤師会が会員のみを対象に公表している場合は、施設基準を満たしません。
あわせて読みたい記事はこちら
【厚労省】地域に情報周知で具体例‐24年度改定の疑義解釈|薬事日報
疑義解釈②:重症度の高い患者について
問2 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)の別添3 調剤報酬点数表に関する事項において、「区分00」調剤基本料の9 在宅薬学総合体制加算の(7)のウにおいて、「「特掲診療料の施設基準等」(平成20年厚生労働省告示第63号)の別表第8の2(在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料に規定する別に厚生労働大臣が定める状態の患者)に該当する患者」とあるが、医科点数表においては、どの算定項目を算定している患者が該当するか。
(答) 次の医科点数表の算定項目が該当する。 ・在宅時医学総合管理料1のイ(1) ・在宅時医学総合管理料1のロ(1) ・在宅時医学総合管理料2のイ ・在宅時医学総合管理料3のイ ・施設入居時等医学総合管理料1のイ(1) ・施設入居時等医学総合管理料1のロ(1) ・施設入居時等医学総合管理料2のイ ・施設入居時等医学総合管理料3のイ
重症度の高い患者に該当するかは、医科点数表の算定項目から判断します。
疑義解釈③:包括的支援加算の対象患者について
問3 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)の別添3 調剤報酬点数表に関する事項において、「区分00」調剤基本料の9 在宅薬学総合体制加算の(7)のエにおいて、「「特掲診療料の施設基準等」(平成20年厚生労働省告示第63号)の別表第8の3(在宅時医学総合管理料の注10(施設入居時等医学総合管理料の注5の規定により準用する場合を含む。))に該当し、本通知別添1第2章第2部「C002」在宅時医学総合管理料及び「C002-2」施設入居時等医学総合管理料の(23)に規定する状態にある以下の患者」とあるが、医科点数表においては、どの算定項目を算定している患者が該当するか。
(答) 次の医科点数表の算定項目が該当する。 ・在宅時医学総合管理料の「注10」に規定する包括的支援加算 ・施設入居時等医学総合管理料の「注5」の規定により準用する在宅時医学総合管理料の「注10」に規定する包括的支援加算
包括的支援加算の対象患者かどうかも、医科点数表の算定項目で確認します。在宅時医学総合管理料等で包括的支援加算が算定されているかが目安になります。
2026年度に改定された背景
2026年度改定の背景には、2025年を通じて中医協で続いた「ストラクチャー評価」と「実績評価」をめぐる議論があります。
厚生労働省は、加算2の届出薬局で無菌調剤設備があっても、1年間で無菌製剤処理加算の算定がない薬局が約3分の2を占める実態を示しました。支払側からは、施設基準に無菌設備を位置づける必要性は乏しいとの指摘がありました。
一方、日本薬剤師会側は、対象患者が少なく調剤の機会が少ないことが原因だと反論しています。2026年度改定は、こうした議論を踏まえて設備の有無よりも実際の対応内容を重視する整理へ踏み出しました。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
【中医協総会】在宅体制加算基準見直しを‐無菌処理の実績少なく|薬事日報
26年度診療報酬改定解説[9]‐在総加算2は個人在宅手厚く|薬事日報
【中医協総会】在宅体制加算4割が算定‐評価メリハリ求める声|薬事日報
【26年度調剤報酬改定展望】「在総加算2」の行方焦点‐かかりつけ要件見直しも|薬事日報
薬局実務と経営への影響
実務面では、届出の有無だけでなく実績が問われる加算になりました。個人宅の実績の積み上げが、今後の評価に直結します。
重症度の高い患者等であれば、施設要件を満たす薬局に限り、施設等でも加算2イ(100点)を算定できます。個人宅と施設等それぞれで求められる機能を整理し、急変時対応や医療用麻薬への対応、多職種連携など地域で役割を分担する視点も欠かせません。
令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について(事務連絡)|厚生労働省
あわせて読みたい記事はこちら
報酬改定、既存薬局は危機感必要|薬事日報
まとめ:【在宅薬学総合体制加算】2026年度改定の要点
2026年度改定は、個人宅への対応をより重く評価する方向を鮮明にしました。評価の軸は「持っている体制」から「実際に果たしている機能」へ移りつつあります。
一方で加算2イの追加的措置により、施設等で重症度の高い患者に対応する薬局にも配慮が加えられました。届出の形式を整えるだけでなく、個人宅を含む多様な患者へ継続的に対応できる実践力が問われるでしょう。
在宅薬学総合体制加算に関する最新情報、これまでの議論について詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。























