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【バイオベンチャーを探る2】カルナバイオサイエンス

2015年07月07日 (火)

キナーゼ創薬で存在感発揮‐癌幹細胞標的薬剤にも挑戦

吉野社長

吉野社長

 カルナバイオサイエンスは、キナーゼ蛋白質を標的とした創薬基盤技術を強みとするバイオベンチャーだ。自社で作成したキナーゼを用いて、阻害活性の高い化合物を絞り込むスクリーニング技術や、リード化合物を最適化するプロファイリング技術で創薬支援事業を展開してきたが、今後はキナーゼ阻害薬開発を加速する。前臨床段階に三つの開発パイプラインを保有しており、今期中に製薬企業への導出を目指す。吉野公一郎社長は、「将来的には製薬大手の新薬研究開発で、キナーゼ創薬を包括的に担えるようになりたい」と話す。

 キナーゼ蛋白質は、体内に約500種類存在し、遺伝子の変異等により異常な活性を示したり、異常なシグナルを伝達することなどによって、癌や免疫炎症疾患、神経変性疾患などの病気を引き起こすことが知られている。既に特定のキナーゼを阻害する経口分子標的薬が20種類上市され、ここ数年で製薬大手からもキナーゼ創薬への関心が高まっている。

 中でも、米アッヴィが米ジョンソン・エンド・ジョンソンとの競合を制し、総額210億ドルで買収したファーマサイクリックスがその典型で、BTK阻害剤「イブルチニブ」は今年売上1000億円の突破が期待されている。

 カルナバイオは、キナーゼ遺伝子を大腸菌や昆虫細胞に導入し、大量で高品質な活性型キナーゼを取得する技術や、キナーゼ蛋白質と阻害薬の阻害活性の測定技術を確立し、製薬企業向けの創薬支援事業を展開してきた。こうした基盤を特徴として、癌や免疫炎症疾患をターゲットとしたキナーゼ阻害薬の自社創薬に踏み出し、開発候補物質を前臨床段階で早期導出するビジネスモデルを推進する。

 吉野氏は、アカデミアとの共同研究を通じて、「キナーゼとキナーゼとの関係性が明らかになり、新たな創薬ターゲットも見つかってきている」と話す。前臨床、探索段階に複数の開発パイプラインが控え、創薬研究を加速させる。

 特に癌領域では、癌幹細胞を標的とした抗癌剤開発が重要なテーマだ。従来の化学療法剤や分子標的薬は、癌細胞に対する抗腫瘍効果を発揮する一方、癌幹細胞には作用することができず、転移や再発を引き起こすといわれている。カルナバイオでは、癌細胞と癌幹細胞の両面でアプローチし、癌の根治療法を目指す。

 国立がん研究センター研究所の山田哲司氏のグループとは、幹細胞の増殖と分化を調節して、恒常性の維持管理を行う「Wntシグナル」の制御に深く関与するTNIK阻害剤を共同開発しており、前臨床段階にある。

 前臨床試験の手前にあるリード化合物の最適化段階では、金沢大学との共同研究を通じて、慢性骨髄性白血病の癌幹細胞を標的としたキナーゼ阻害剤を開発している。これまで固形癌へのアプローチが中心だった癌幹細胞標的薬剤開発で、血液癌にも道を拓く。

 今年は営業黒字を達成する計画。自社で開発・販売の機能を持って製薬企業を目指すバイオベンチャーが増える中、カルナバイオは、これまでと変わらず“キナーゼ創薬”にこだわり、研究開発に特化したベンチャーとして新薬創出に集中していく方向だ。

カルナバイオサイエンス
http://www.carnabio.com/japanese/


この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2015年5月1日号に掲載された記事です。

バイオベンチャーを探る1 目次

バイオベンチャーを探る2 目次

バイオベンチャーを探る3 目次



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