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【医療2.0《医療とWEB2.0》】第4回 医療ポータルという分野における新しいサービス(2)

2007年10月29日 (月)

 今回は国内サービスのご紹介です。

ここカラダ
ここカラダ

 ここ最近、医療ポータルの「ここカラダ」(http://www.cocokarada.jp/)ってどうなの?という質問を立て続けに頂きました。当事者に聞いた方が良いのでは?という話ではあるのですが、今回はこのサイトを取り上げつつ、自社利益と社会価値といった議論も含めて面白い話ができればと思います。

利用者の印象

 さて、この「ここカラダ」というサイト。利用者の声を聞いてみると

□リクルートと三井物産の合弁会社。
□全然WEB2.0的じゃないよね。
□ホットペッパーの病院版?割引はないんだろうけど。
□家庭の医学をそのままWEBに載せた感じ。診断みたいなのは時間がかかって使いづらい。

 経営者・ビジネスマン・主婦・学生、それぞれ数人に印象を聞いたところ、上記のようなキーワードで語られることが多いようで、中にはネガティブなニュアンスで語る方もいるという結果でした。

収益モデルに対する私の見解

 収益モデルは非常にシンプルで、「ホットペッパーの病院版」という表現は非常に近いのではないでしょうか。(※1)バックヤードのシステム(情報掲載の受注管理等)を住友電工情報システム株式会社が作っているようなので、それが全てではないでしょうが、病院・個人クリニック等から広告収益をあげる収益モデルが軸だということが言えるかと思います。

 確かに個人のクリニック等集客ニーズのある病院は少なからずありますので、それらから月額費用を頂くモデルというのはビジネスを収益面で成功させるという点からすると決して悪いモデルではないかと思います。

 ただ、収益面では成功するかもしれないけども、社会価値を向上させるのに貢献するかというと疑問が残ります。利用者、特に経営者層はそういったところを直感的に嗅ぎ分けたためにネガティブな印象を持ったのだと思います。

社会全体の価値向上という観点

 では何が不満なのか。何に対してネガティブなのか。考えてみました。

□このサイトが多くのユーザーに利用されるようになったとして、魅力的な広告を掲載した病院・クリニックの集客が増加し、それ以外の病院・クリニックへの集客が相対的に減ることは、需給バランスを崩すことに繋がる可能性があります。儲かる病院・クリニックはさらに儲かり、儲からないところはさらに儲からなくなるわけです。医療の質の低い病院・クリニックは淘汰されて良いと思うかもしれませんが、広告戦略が競争の中心になってしまった場合、儲かるかどうかと療の質が高いかどうかは必ずしもリンクしないでしょう。そう考えた場合、社会全体として考えた場合、このサービスの価値って何なの?となります。

□大半の病院・クリニックが広告掲載するようになったとして、結局病院・クリニックの経営を考えた場合コスト構造的に広告費がアドオンされます。また、マクロに考えると従来は存在しなかった、医療機関向けの広告・マーケティングに従事する人が出てくるわけです。こういったコスト、決して大きくはありませんが総医療費を高めます。そうなった場合、社会全体として考えた場合、このサービスの価値って何なの?となってしまいます。

 おそらくネガティブの原因は上記のようなところにあり、逆にこれらの疑問を解消できる仕組みがそこにあれば、「ここカラダ」は利用者に圧倒的に支持されるサイトへと成長するでしょう。化ける可能性はあります。

化ける可能性

 利用者にとってのコア機能はやはり病院検索でしょう。何かカラダやココロに関する不安を抱えたらお医者さんに診てもらおうというのが一般的ですから、どの病院に行こうかというのはかかりつけ医を決めていない人であれば誰しもが考えることです。

 そういった行動文化に対してサービスを仕掛け、そこに集中するというのはさすがリクルートと三井物産の合弁会社だなぁと思いますが、特に医療分野で何かのチャレンジを行う場合には自社収益のみならず社会価値(社会厚生)の向上も同時に考えないと、収益面では大成功したとしても必要悪の社会インフラへと成り果ててしまうことがあります。

 一方、利用者にとっての真の価値は何かを考え、病院・クリニックに対し、「今後は利用者にとっての真の価値を、どの病院・クリニックが最も高めることが出来るかという競争ルールで競争して下さいね」という競争の構図を生み出す情報サービスを提供できれば、競争が利用者の便益に結びつくという好循環が生まれます。

 具体的には何をすればそうなる可能性があるのか少し考えてみると・・・

□病院口コミサイトとして実際に病院を利用したユーザーの声を吸い上げる。
□第三者機関による評価や規模によって広告料金を変動させる。
□医師と利用者の相性の予想などの付加価値を付け加える。

 などが考えられます。ただ、現状の収益モデルの場合収益は広告主に依存していますので、都合の良くない情報が多く混じってしまったり、競合からの攻撃的な書き込みが起こる場に広告を継続的に出してもらえるかという問題も同時に生じ、どうしても収益面のリスクを抱えてしまいますし、円滑な運営を行うための費用もかさんできます。これらはCGMサイトと呼ばれるユーザー参加型のサイトには常に付きまとう問題ですが、もしユーザーにとっての真の価値を考えるならば、これらはいずれ考えていかなければならないでしょう。

まとめ・次回予告

 医療分野は特に、自社の利益と社会全体の価値の両面を考えなければなりません。これは組織として行うのは非常に難しい。「ここカラダ」が医療情報ポータルと自らを紹介しつつも、収益軸である病院検索を中心としたサイトを作らざるを得ない状況は、決してユーザーを軽視しているわけではなく、収益を考えた場合そうならざるを得ない事情があるからでしょう。

 そうならざるを得ない事情・・・実は日本の医療情報サービスは欧米に比べて明らかに収益モデルを作りにくいという現状があります。その中で奮闘している「ここカラダ」。今はまだ発展途上という印象を受けますが、今後、社会価値を劇的に向上させるサイトへと成長していくよう願っています。

 次回は、なぜWEB2.0的医療情報サービスが日本では台頭してこないのかというお話を出来ればと思います。医療分野へと参入する事業家の悩みの種。欧米と日本の医療周辺ビジネスの比較を行いながら、盛りだくさんでお届けします。

参照データ
(※1) www.sei-info.co.jp/products/images/fw_g_vol5.pdf


ホスピタリティアライアンス代表取締役
TOCコンサルタント    宮川 耕

医療2.0《医療とWEB2.0》

連載 医療2.0《医療とWEB2.0》




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