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【医療2.0《医療とWEB2.0》】第2回 医療ポータルという分野における新サービス(1)

2007年09月28日 (金)

Revolution Health (米)

www.revolutionhealth.com
www.revolutionhealth.com

 まずは米国における急成長サービスをご紹介。

サービスの特徴

 『Revolution Health』は2007年4月下旬にローンチされて以降急成長を遂げているWEB医療情報ポータルサイト。現在130以上もの機能・ツールを搭載し、保険を選んだり、健康食品を買ったり、医者を探したりとヘルスケアに関するありとあらゆるニーズを満たすことが出来る。WEB2.0的ツールも積極的に投入している。

 ただ、運営者側の視点から分析してみると、サービスを利用する中で利用者のカラダに関する情報を蓄積していこうという「擬似カルテ的データ蓄積」という思想がおそらく根底にあり、単純に色んなサービスを凝縮してみましたといったモノではないようである。

5億ドルという投資規模

 経営メンバーはAOL創設者ケース氏を筆頭に、ブッシュ政権時の国務長官パウエル氏、元ヒューレットパッカードCEOのフィオリーナ氏という大物揃いで、投資規模も5億ドル(約600億円)と凄まじいことになっている。

 『Revolution Health』は例外的な投資規模ではあるのだが、医療情報サービスという分野全体はここ1年ほどかつてのITバブルに匹敵するほど活況を呈しており、日本のベンチャーとは比較にならないほど大きな資金が投入されている。日本のベンチャーへの投資はせいぜい数千万0数億だが、米国では上場前のフェーズで20030億円を調達というケースもそう珍しくない。

投資・回収・収益モデル

 話を『Revolution Health』に戻そう。たった半年でこれだけの大規模ポータルへと成長させられたのもやはり資金力による部分が大きい。必要な機能・ツールがあれば、似たようなサービスを提供している会社ごと買ってしまうという戦略を採っており、プロモーションにも多大なコストを投下しているのである。

 資金力によって、急成長を買ったのだ。

 しかし、『Revolution Health』は金持ちの道楽でもボランティアではなく、ビジネスである。当然、投資には回収がセットで付いてくる。どこかから収益をあげなくてはならないのだ。では一体どこから収益をあげるのか。以下、考察してみることにする。

 (1)製薬会社からの広告費

 まず、最大の広告主として製薬会社が考えられる。米国において製薬業界全体の広告費用は年間約130億ドル、うち昨年のWEB広告費用は約4.55億ドル(約600億円)。当分の間は全体の約130億ドルという予算枠は変化しないと想定されるので、WEB媒体としてのシェアを高めるのと同時に、いかに他媒体から広告費用をシフトさせるかというところが重要になってくる。ただ、予算枠が劇的にTV(主にケーブルTV)からシフトはしないだろうから、現在のWEBMDと同規模のサイトへと成長したとして・・・

 仮説:WEBMDに匹敵するユーザー数(約2000万人)を獲得できたとし、数ある媒体の中でWEB広告予算のうち20%のシェアを獲得できたとする。粗利を30%とすると、約600(億円)×0.2×0.3=36億円の利益となる。

 (2)ユーザー課金

 『Revolution Health』は既に有料会員サービスを提供している。年間129ドル(約15000円)で病院・保険・健康について専門家の回答・アドバイスが受けられるというものだ。アメリカでは日本とは違い、病院・医療サービスによって料金が大きく違ってくるため、病院選択のニーズは大きくあるし、保険支払いのトラブルも多いため、その点にも強いニーズがある。そのニーズに対応するサービスを提供することで課金しようというモデルである。

 仮説:WEBMDに匹敵するユーザー数(約2000万人)を獲得でき、そのうち20%が利用するとする。また、専門家への報酬を差し引いた粗利が20%とすると 2000万(人)×0.2×15000(円)×0.2=120億円の利益となる。

 (3)PHR(Personal Health Record)活用による新たな収益モデル

 最初に『Revolution Health』というサービスの根底には「擬似カルテ的データ蓄積」という思想がおそらくあると述べたが、サービスを運営する中で、カルテではないのだけれども、カルテに限りなく近い情報が蓄積されていくはずで、それをBtoB展開することが考えられる。製薬会社に対しては新薬開発に活用することやマーケティングリサーチのデータ提供、公的機関との共同研究、病院・医師への情報販売などが想定される。実現可能性は未知数ではあるが・・・。

 以上、収益モデルに関して簡単な考察を行ってみた。

 私見:(1).(2)だと、ビジネス的には一定の収益が出るため旨みがあるのかもしれないが、抜本的な医療業界の改革・医療品質の向上には繋がらない可能性が高かったりする。そんなわけで、是非とも(3)の部分に力を入れていただいて、アメリカの医療が抱える問題、医療難民問題等を解決していただきたいと考えているのだが、果たして『Revolution Health』の行く末は・・・。今後もウォッチし続けていこうと思う。

アクセス数・業界内順位

 ちなみにアクセス数の伸びに関しては下記の通り。

 Alexaトラフィックランキング
 (ソース:www.alexa.com

 飛躍的な伸びが見て取れると思う。現在のユニークユーザー数は月間約300万人で、業界6位のユーザー数を誇るサイトへと躍り出たことになる。ちなみに上位5サイトとは

ユニークユーザー数
1. WEBMD 約2000万人
2. NHI 約1000万人
3. MSN Health 約800万人
4. Yahoo! Health 約700万人
5. Healthline 約300万人

 である。

 ※5位のHealthlineは医療特化型のバーティカル検索エンジンを提供しており、単純なポータルとは違う特徴的なサービスであるため、同じ軸で比較することは趣旨と違うのであるが、これはまた別の機会に述べるとする。

まとめ

□医療業界におけるベンチャーは米国で最も注目されている分野であり、大量の資金が投入され、WEBの最新テクノロジーを活用したサービスが次から次へと誕生している。

□WEB医療情報サービスに対するユーザーのニーズも非常に強く、これは米国と日本の医療制度の違いによる部分も大きいのだが、米国では非常に多くのユーザーが医療情報を取得するのにWEBを活用している。

□WEB医療情報サービスが、遅かれ早かれ医療業界のあり方を変えていくであろうことは確実であり、変化の中心には医療消費者「個人」がいる。個々人が自身のヘルスケアを真剣に考える時、医療情報の管理は自身で行うようになり、既得権者からのパワーシフトが起こる可能性がある。

 3つ目は私の“そうなって欲しい”という思いが多分に含まれるが、米国でのトレンド・これから日本でも起ころうとしていることはまとめると大体このようなものなのではないだろうか。

 次回は国内サービスをご紹介しようと思う。


ホスピタリティアライアンス代表取締役
TOCコンサルタント    宮川 耕

医療2.0《医療とWEB2.0》

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