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【インド薬業事情】第18回 インドの医薬ビジネスサポート業―3 (研究支援)

2007年10月2日 (火)

 前々回の稿においてCROの「臨床試験支援サービス」について述べたが、本稿では探索研究(Discovery Research)を含めた「研究支援サービス」の分野について述べたい。

 特に日本企業の目から見たインドの研究支援サービスについては大きく二つに分けて考える必要がある。一つはインドの製薬企業が提供するサービスであり、もう一つはCROを含む研究受託企業によるサービスである。

インドの製薬企業が提供する研究支援

 製薬企業が個別のビジネスとして提供するサービスの主なものとしては有機合成(CCS: Contract Chemical Synthesis)が挙げられる。インドでは2004年まで物質特許が認められず製法特許のみであったため、各国の新薬メーカーが開発した新薬を別ルートで合成して特許をかいくぐったり、特許切れの後は競って後発品を開発したりすることによって有機合成のプロセス開発のノウハウが培われている。そのため大手の製薬各社は200名以上の有機合成のスペシャリストを抱えており、自社の新薬開発に活用する一方で受託事業も行っている場合が多い。日本企業にとっては、特にシード化合物の誘導体を短期間で多数合成してスクリーニングにかける場合や、化合物その物は決定しているが工業的生産のためのプロセスを改良したい場合等に活用するとその効果は大きいと思われる。今更言うまでもないが、低コストで高い品質のサービスが受けられる。

 また、一部の企業はバイオテクノロジーの分野でも類似のサービスを展開しており、蛋白の誘導体合成や収率向上のためのプロセス開発も行っている。

 これらのサービスを更に有効に活用する手段として、ライセンス契約を結ぶ手法もある。即ち、単に研究を委託するのではなくライセンス契約を結び例えば成功時にインドでの開発・販売権を与える代わりにインド企業が全て又はある程度の経費を負担してこれらの研究を行い、得られた知見や情報については日本企業がその権利を保有する等の方式が考えられる。

研究受託企業が提供する支援

 前述の有機合成に関してもそれを主体に事業展開している企業があるが、それ以外にも前臨床試験を含めて探索研究を受託している企業が多数存在している。これらの企業は元来海外からの受託ではなく、インド国内の製薬企業からの研究受託によって成長してきたのであるが、近年では多国籍のメガファーマから大口の案件を受託して更に急成長している。

 例えば昨年、米メルクはインドの受託研究機関であるAdvinusと契約を締結し、1プロジェクト当たり約80億円を上限としてその探索研究を委受託により行うこととした。Advinusはメルクから提示された糖尿病・肥満・高血圧等の代謝性疾患治療薬のシードについてその誘導体合成・スクリーニング・毒性や吸代排等の前臨床試験、前期臨床試験を行って候補物質を絞り込み、メルクはその中で最も有望な物質について後期臨床試験を行うとしたものである。最終的に製品化された場合にはAdvinusは売上げに対してロイヤリティを受け取る権利を留保しているそうである。

 これらの研究受託産業成長の背景には、高いスキルの研究者が比較的低い賃金で活躍している現状と、知的財産保護に対するインドの前向きな取り組みがあり、その点については前稿の「受託製造」と全く同じであるので参照していただきたい。また、インドは欧米に似た契約社会が成立しているので、研究成果に対する権利等についても極めて明確に規定することができ、またそれが厳守されるということも加えておきたい。

 医薬業界に限らず日本企業はその研究分野の外部委託については欧米諸国に比べるとかなり慎重でなかなかこれを実施しないようである。無論、科学・技術をその根幹に据えている企業にとってはなかなか踏み切れない一線があるのかも知れない。しかし、近年になって製造の委受託が極めて一般的なこととして受け入れられていることを考えると、「製造」よりも遥かに人件費の割合の高い「研究」の分野において委受託を検討しない手はない。医薬品の研究開発費の3分の1を占めると言われる「研究」についてインドを試してみる価値は十分に高いものと思われる。


トレント・ファーマ株式会社
代表取締役社長・黒木俊光

連載 インド薬業事情




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