2005年1月、インドは物質特許制度を導入した。
それ迄は、インドの製薬企業は、従来の製法特許制度のもとで、製法特許に触れない独自の製造方法を開発し、特に欧米の先発メーカーの新薬のジェネリック品をインド国内で製造販売し、また、それらを物質特許のない発展途上国に輸出してきた。
しかし、物質特許の導入は、インドの製薬企業、特に大手の事業戦略に根本的な変更をもたらした。
即ち、10年後の物質特許の導入が予定されていた1995年頃から、インド大手は積極的に新薬開発に取り組み、2005年には、ほとんどの大手企業は、新薬開発のための研究所とそのスタッフを完備するに至り、さらにその強化を図っている。
これらの成果は、以下のように、新薬開発のステージに姿を見せ始めた。
Indian NCEs in Pipeline | |||||||
Company | Preclinical | Ph-I | Ph-II | Ph-IIb | Ph-III | IND filed | Total |
Bicon | – | – | 5 | 1 | – | – | 6 |
Lupin | – | – | 1 | – | – | 1 | 2 |
Ranbaxys | 4 | 1 | 2 | – | – | 2 | 9 |
Dr. Reddys | 8 | 3 | 2 | 13 | |||
Torrent | 7 | – | – | – | – | – | 7 |
Wochardt | 1 | 1 | – | – | – | 1 | 3 |
Zydus Cadila | 3 | – | – | – | – | – | 3 |
Total | 23 | 5 | 10 | 1 | 4 | 43 | |
(Source: The Bernstain Report on BioBusiness, August 2, 2004) |
現時点では、インド発の新薬が米FDAやEUのEMEAに申請されたり、承認を取得する段階には至っていない。しかし、2010年以降は、インド発の新薬が世に出るであろう。
因みに、多くのインド企業の戦略は、欧米での新薬の臨床開発のための人材・ノーハウの不足や資金面から、POC(Proof of Concept, Phase IIa段階)までは自社で行うが、それ以降は、欧米の企業にライセンスし、共同開発することを予定している。
これは、まるで日本の中堅製薬企業が新薬開発で採用しているビジネス・モデルそのものといえる。
連載 インド薬業事情
- 「インド薬業事情」連載終了
- 第21回 インド製薬会社の収益性
- 第20回 インドの医薬品の品質
- 第19回 インドのAPIビジネス―日本企業の対応
- 第18回 インドの医薬ビジネスサポート業―3 (研究支援)
- 第17回 インドの医薬ビジネスサポート業―2 (受託製造)
- 第16回 インドの医薬ビジネスサポート業―1 (CRO)
- 第15回 インド製薬会社の海外展開
- 第14回 インド製薬会社の強みと弱み
- 第13回 インドの医薬品市場―主要企業と成長
- 第12回 インドの医薬品市場の概要―その特性
- 第11回 インド高裁によるノバルティスの請求棄却に関して [緊急掲載]
- 第10回 インドの医療供給体制
- 第9回 インドの医薬品安全性対策
- 第8回 インド製薬会社のMR
- 第7回 インドの医薬品マーケティング戦略
- 第6回 インドの医薬品流通
- 第5回 インドの薬価
- 第4回 インドでの医薬ビジネスに関する法規制
- 第3回 インドの医薬品と知的財産権
- 第2回 インドの医薬品承認制度
- 執筆者紹介 黒木俊光氏(トレント・ファーマ社長)
- 第1回 物質特許制度の導入とインド企業の新薬開発
- 執筆者紹介 川端一博氏(ザイダスファーマ社長)
- 「インド薬業事情」連載開始!