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【インド薬業事情】第12回 インドの医薬品市場の概要―その特性

2007年08月21日 (火)

 インドの医薬品市場の巨大さやその成長性等に関しては、既に多くの情報が提供されている。従って、本稿では、それらについての説明は最低限に止め、特にインドの医薬品市場の特性を中心に述べることにしたい。

市場規模

 インドの国内医薬品市場(2006年度)は、約6,800億円、内、感染症1,230億(18%)、消化器760億(11.1%)、循環器700億(10.3%)、呼吸器640億(9.4%)、消炎鎮痛610億(8.9%)、ビタミン・ミネラル600億(8.8%)、婦人科370億(5.4%)、神経系370億(5.4%)、皮膚科369億(5.4%)、糖尿病300億(4.4%)、眼科・耳鼻科120億(1.7%)、その他となっている。過去、年7%で成長してきており、今後5年間は年平均で8~11%程度の成長が見込まれている。

 また、以下に述べる上位10品のリストからも判るように、即時の対応のために薬剤が大きな売上(現在、全体の売上の約3/4が急性期治療薬)を占めているが、最近は、心臓関係、高血圧、糖尿病薬等の慢性期治療薬が伸張している。

 尚、インドの医薬品市場は、金額的には全世界の中では15位前後であるが、生産量では世界4位の医薬大国である。

 注:US$=120円、インドルピー=3円で換算

需要の多様性

 インドの医薬品市場の特性として最初に上げられるのは、その需要の多様性である。10億を超える人口、異なる気候・風土の存在、多様な生活習慣、所得・生活水準の格差等から、様々な疾病が発生し、様々な薬剤が様々な価格で様々な販売チャネルを通じて流通している。この結果、同じ成分の薬剤(例えば消炎鎮痛剤)でも、高い薬価で大都市の私的病院において週単位で処方されるものもあれば、極めて低薬価の製品で1日分/1回分が農村地区の公的病院で処方されることも日常的に起きている。また、バイオ医薬品の中には日本の薬価の7割程度の価格設定されているものもあり、高額な医薬品が消費される基盤が着実に出来つつある。

大きな売上の製品がないこと

 インドでの売上高の上位10品は以下となっているが、インドと日本の物価水準から、インドでの売上を10倍に計算しても、300億円を超える製品は1品のみである。これは、インドの市場において特定の製品が大きなシェア/売上を獲得することがいかに困難であるかを示していると言える。反面、どのような製品にもそれなりのチャンスがあるとも言える。

商品名 一般名(成分) 売上高(百万円) 対前年比(金額) (数量)
1, Corex Chlorpheniramine, Codeine 3,090 -3% -9%
2, Voveran Diclofenac 2,910 6% -7%
3, Taxim Cefotaxime 2,640 4% 1%
4, Phensedyl Chlorpheniramine, Codeine 2,520 36% 26%
5, Becosules
  Cough
Vitamin B complex 2,370 -5% -12%
6, Sporidex Cephalexine 2,280 2% -2%
7, Augmentin Amoxycillin, Clavulanic Acd. 2,250 7% 4%
8, Athalin Salbutamol 2,222 2% 2%
9, Human Mixtra Insulin 2,222 10% 10%
10, Liv-52 Herbal Hepatobility 2,190 4% -1%
Source:ORG/IMS, Aug. 2005

多数の多様な規模の競争者の参加と競争の激烈さ

 インドでは4000を超える医薬品製造(製剤)工場が登録されており、大小2000を超える会社が、20万人を超えるMRによってプロモーションされている。この結果、値引やリベート等の価格競争が日常的に行われている。これらのことは価格の透明性を損なうため、価格規制を受ける製品については、最高販売価格(MRP, Maximum Retail Price)、の金額がPTPシートの裏に印刷されている。

 終わりのない価格競争を回避し、また最小化すべくサンプル提供(いわゆる添付)や接待等の日本であれば公競規に触れる活動や、医師の継続教育を支援するプログラムを企画・推進し、それを通じてシンポ化を図ったり、研究会、説明会等に注力する企業もある。いわば、“何でもあり”の世界となっているが、外資系や国内大手は、質の高い医薬品情報の提供をメインとした活動を展開しているといえる。


ザイダスファーマ株式会社
代表取締役社長・川端一博

連載 インド薬業事情



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