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【インド薬業事情】第13回 インドの医薬品市場―主要企業と成長

2007年08月28日 (火)

 インドの医薬品市場の概要と特性は前稿で既に述べたので、本稿ではこの市場を牽引している主要企業の売上げ動向を中心に述べたい。

 2007年5月における移動12ヶ月の売上げ高を基準に、2006年、2005年、2004年の同時期の売上高と比較しながら上位20社を眺めてみた。(1ルピー=3円で換算)

順位 会社名 売上げ高(億円) CAGR%(2004-2007) 前年度順位
1 Cipla 432 9.0 3
2 Ranbaxy 432 11.3 2
3 GSK 429 4.4 1
4 Nicholas Piramal 356 11.5 4
5 Zydus Cadila 301 9.1 5
6 Sun 278 14.0 6
7 Alkem 267 14.5 7
8 Pfizer 221 6.2 8
9 Lupin 209 18.9 12
10 Dr. Reddy’s 204 9.2 11
11 Sanofi Aventis 196 7.8 10
12 Aristo 194 14.6 9
13 Abbott 182 12.2 14
14 Alembic 170 6.6 13
15 Mankind 169 48.5 23
16 Torrent 167 13.0 15
17 Intas 154 23.5 19
18 Wockhardt-Merind 149 7.5 16
19 Emcure 148 38.0 25
20 Novartis 143 8.0 18
Source: ORG/IMS, May 2007より加工

 まず全体について見ると、2004年から2007年の間の市場の平均成長率は11.4%であり、上位20社合計の平均成長率は11.8%である。但し、上位10社合計では10.1%、30社合計では11.7%であるから、11位から20位にある企業の伸びが特に著しいことがわかる。

 因みに、上位10社のシェアは36.5%、上位20社では56.0%、30社では69.1%となっている。即ち、インドの医療用医薬品市場のほぼ7割を上位30社で占めており、そのまた半分は上位10社で占めているということである。

 表に掲げた上位20社の本社の所在地であるが、12社がムンバイに、3社がアーメダバードに、5社がそれ以外の都市に本社を置いている。参考までに加えると21位から30位までの10社では8社がムンバイ、1社がアーメダバードである。日本では東京・大阪の2極集中は至極普通のことであるが、西欧に近い文化を持つインドでこれ程1極に集中しているというのには興味深いものがある。理由の一つにはムンバイがインド経済の中心であること、もう一つにはインドの医薬品産業が輸出型産業で、海運の便の良い地に本社を構えてスタートしていることが揚げられるのではなかろうか。

 ここ数年上位の顔ぶれに大きな変化はなかったが、MankindとEmcureの成長には著しいものがある。前者は他社に比べて非常に低い価格で販売しているという特徴を有するが、後者については抗感染症、消炎鎮痛、消化器系の薬剤が多いということ以外には大きな特徴は見受けられない。

 一方、外資系企業に焦点を当ててみると、アボット以外は全て成長率が市場の成長率を下回っている。この原因の一つとして各社の販売品目数が影響を及ぼしているように思われる。インド国内企業は何れも次々と新製品を投入してラインアップの新陳代謝を行っており、シプラでは800品目以上、20社中一番少ないアリストでも219品目を有しているが、外資では一番多いGSKでも207品目、サノフィ・アヴェンティスでは74品目しかない。即ち、成長著しいインドの医薬品市場においては、品揃えによって更に売上増を図る必要があるということであろうか。但し、この点については今後物質特許に保護された新薬が登場し始めた段階でまた異なった様相を呈してくるものと予想される。

 もう一点説明を加えておくと、これらの上位20社のうち14社(外資5社を含む)にはインド国内での合併や事業統合等による売上げの増加が含まれている。海外への展開のみならず、インドの大手製薬企業は国内でもそのシェアの増加と確保に様々な動きを見せている。


トレント・ファーマ株式会社
代表取締役社長・黒木俊光

連載 インド薬業事情



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