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【インド薬業事情】第10回 インドの医療供給体制

2007年8月7日 (火)

 本稿においてはインドの医療供給事情についてわかっている範囲でご紹介したい。

 まず全般的な数字を羅列してみよう。

 ヘルスケア関連支出: 約3兆3千億円(GDPの5.7%)
 公的支出: 15.5%
 民間支出: 84.5%
 外来患者支出: 61%
 入院患者支出: 39%
 ヘルスケア関連産業成長率: 毎年15%

 これらの数値から言えることは、全体としてそれなりの規模があり、成長は著しい。但し日本と異なり公的支出の割合が極めて小さいということであろうか。

 しかし、その裏には更に複雑なインドの事情が含まれていることを忘れてはならない。

 まず、この成長を支えているのは中産階級と言われる、準富裕層である。例えば入院費の例として、設備の整った民間病院の場合で1日約2千7百円程度から始まり、個室では1日1万円前後、高級個室になると1日3万5千円が必要になる。日本での入院費に比べるとかなり安いとは言え、給与水準・物価が日本の約20分の1程度と言われるインドでの価格である。貧困層にはとても払える金額ではない。即ち、これらの医療供給や関連産業に関する数値は多く見積もって25%から30%の富裕層の支出によって形成され、また恩恵の大半もこれらの人々が蒙っていることを念頭に置く必要があろう。

 更に数値の紹介を続けると、

全国の医師数: 1,000,000人
 (但し、医師会に加盟している医師は7,600人程度)
技師や医療支援要員: 350,000人
看護婦(婦人のみの数値): 865,000人  (協会登録者数)
病院数: 16,000件
 (他に、サブセンターと呼ばれる施設が142,500件、プライマリーヘルスセンターと呼ばれる施設が23,000件ある)
医科系大学数: 162校
歯科系大学数: 100校
薬科系大学数: 150校
看護系大学数: 85校

 これらの数値だけを見ると日本と同等、或いはそれ以上の医療供給体制が整っているようにも見える。しかし、インドの国土は日本の8.7倍で人口は日本の約10倍である。上記の数値を全て10分の1にしてみると、インドでは如何に医療供給の体制整備が遅れているかがおわかりいただけるものと思う。これを表す数値が人口当たりベッド数で、インドでは0.7床/千人しかない。インド政府では今後10年間に毎年8万床ずつ増やしていく計画である。

 前述の数値はインド全土に関する数値を合計したものであるが、これらを都市部と地方、公的施設と民間施設に分けてみるとまた全く違った切り口になってくる。貧富・地域・公民の全てについてそれぞれの格差を明らかにし、実態を説明するのは結構骨の折れる課題であり、またの機会にまわしたいと思う。

 最後に、早くインドの医療事情が改善され、現在約55歳と言われる平均寿命が先進諸国並みに伸長し、千人の内80人が亡くなると言われる乳児の命が助かるようになることを願いたい。


トレント・ファーマ株式会社
代表取締役社長・黒木俊光

連載 インド薬業事情




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