臨床試験を行うに当たって、患者の人口、多岐に亘る人種の構成等からインドをその中心的存在として捉える人は多い。単に低コストで行えるからというだけでなく、インドの医療技術の高さは昨今定評となっており、また欧米でICH‐GCPを身につけた医師が多くその質の高さも理由の一つである。
この様なインドにおいて、CROも活発に事業を拡大しつつある。
現在のインドCRO市場はまだまだ発展途上にあり、その市場規模は約135億円と言われている。近年は毎年約15%のペースで成長を続けてきたが、これが更に加速され、2010年には400億円を超えるものと市場では期待している。この成長を牽引するのは言うまでもなく欧米の大手多国籍製薬企業である。ある調査会社の報告によればこれらの多国籍企業がインドに臨床開発拠点を移すことによって、開発コストは約30%も削減できるとのことである。
インドのCRO業界を構成するのは国際的CROの子会社(クインタイルズやコバンス等)、国際的CROと国内のCROの提携により設立された子会社(パレキセルとシンクロンの合弁、SRLとランバクシーの合弁等)、そしてインドの国内CROやインドの製薬企業の子会社等である。
現在、インドには100社程のCROが存在すると言われているが、その主だったところとしては;
PharmaNet
Pharma-Olam International
ClinTec International
ClinWorld
GSK Clinical Data Centre
Synchron Research
Accutest
Asian Clinical Trial
Axon
Apex
Lambda
ClinInvent Research
iGates Clinical Research
Wellquest
等が挙げられる。
一昨年、インドにもCRO協会が設立されたが、現在加盟しているのはまだ10社程度であり、CROの受託業務としては欧米や日本と同様、臨床試験のみならず前臨床試験も含めた広い範囲での研究・開発業務が行われているが、特に欧米の大手製薬企業にとって大きなメリットとなっているのがIT関連技術を駆使したデータマネージメントと臨床試験管理、そしてスピーディ・高品質・低コストを謳われる臨床試験モニタリング業務である。
しかし、これらの言わば「川下」としてのCRO業務に大きな比重を置いた委託が行われる一方で、「川上」にあたる試験デザイン、プロトコール作成やレポート作成等については各企業が自前で行う場合が多く、今後のインドCRO業界の成長における懸案事項ともなっている。
連載 インド薬業事情
- 「インド薬業事情」連載終了
- 第21回 インド製薬会社の収益性
- 第20回 インドの医薬品の品質
- 第19回 インドのAPIビジネス―日本企業の対応
- 第18回 インドの医薬ビジネスサポート業―3 (研究支援)
- 第17回 インドの医薬ビジネスサポート業―2 (受託製造)
- 第16回 インドの医薬ビジネスサポート業―1 (CRO)
- 第15回 インド製薬会社の海外展開
- 第14回 インド製薬会社の強みと弱み
- 第13回 インドの医薬品市場―主要企業と成長
- 第12回 インドの医薬品市場の概要―その特性
- 第11回 インド高裁によるノバルティスの請求棄却に関して [緊急掲載]
- 第10回 インドの医療供給体制
- 第9回 インドの医薬品安全性対策
- 第8回 インド製薬会社のMR
- 第7回 インドの医薬品マーケティング戦略
- 第6回 インドの医薬品流通
- 第5回 インドの薬価
- 第4回 インドでの医薬ビジネスに関する法規制
- 第3回 インドの医薬品と知的財産権
- 第2回 インドの医薬品承認制度
- 執筆者紹介 黒木俊光氏(トレント・ファーマ社長)
- 第1回 物質特許制度の導入とインド企業の新薬開発
- 執筆者紹介 川端一博氏(ザイダスファーマ社長)
- 「インド薬業事情」連載開始!