手術後はお陰様で順調に快復し、退院二週間後に執刀医の受診があっただけで、手術日から4週間後には職場復帰することができました。久しぶりに気分転換も兼ねてコンサートに行ってきましたので紹介させていただきます。
ボストン交響楽団は小澤征爾さんが音楽監督及び指揮者として長年在籍していたこともあり、日本でもご存知の方がいらっしゃると思います。このボストン交響楽団は夏の間、マサチューセッツ州の西端に近い、レノックスという小さな町でタングルウッド音楽祭を開催し、昼は練習・夜はコンサートと合宿生活のような日々を過ごしています。
夫は数年前に知人と訪れており、私にも良い所だから行こうと何度も誘うのですが、苦手なクラッシクを聴く為にボストンから車で3時間かけて行く気にはなれず、なかなか重い腰が上がりませんでした。しかし、ETやスターウオーズ、最近ではハリーポッターなど多数の映画音楽を手がけた、ジョン・ウィリアムスが一晩だけ指揮をするというので、その日に合わせて行ってきました。
タングルウッド音楽祭が有名なのは、その音楽だけではなく、広大に敷き詰められた芝生の上でピクニックをしながら音楽を楽しめることです。私達が到着したのは夕方6時頃でしたが、すでに敷地内では宴たけなわ!マサチューセッツ州では公共の野外での飲酒は禁止ですが、ここはチケットを購入した会場内ですので、野外とはいえ飲酒は問題ありません。
テーブルを広げてテーブルクロスを敷き、豪華な料理と沢山のワイン、それに花やローソクまで灯しているグループもあります。残念ながら夫は運転するので今回は我慢。一緒に行った友人夫婦は奥様が妊娠中でご主人も遠慮して飲みません。私はというと、持参したブルーベリー・ウォッカで良い気分です。
コンサート開始は夜8時半、シェドと呼ばれるコンサートホールの席を友人が購入してくれましたので、食後はそこへ移動しました。シェドは上から見ると扇を広げた形で、客席後方と横には壁がありません。
まるで広大な芝生とコンサートホールが一体化したような感じです。この独特な形状のおかげで、芝生席の観衆も音楽を楽しみ、シェド内の人は開放感ある中で過ごすことが出来ます。ただ、コンサートホール内は飲食禁止なので、やっぱりお薦めは芝生席でのんびりでしょうか。
コンサートはFilm nightと銘打ち、名画の名場面を編集してスクリーンに映し、それに合わせて音楽を奏でます。映像と音楽が見事に合致し、あんなにも感情や状況を表現できるものかと思いました。とは言うものの、ほろ酔い気分でほとんど夢見心地の私でした。アンコールでは、「ET」の演奏で会場が一段と盛り上がり、一気にクライマックスを迎えた感じでした。私が完全に聞いたのは「ET」だけで、「高い料金を払って気持ちよく寝たぁ」というのが正直な感想です。
さて、すでに案内がされていますように、連載を載せていただいているメディカル・アカデミー・ニュースが薬事日報メディカル版へ統合されるにあたり、今回が最終回になります。
本来なら最終回として全体のまとめを書くべきなのでしょうが、そのような才覚は持ち合わせておりません。米国で私が感じていますのは、総じて日本の臨床検査技師個々の技術と知識は、アメリカに勝るとも劣らないという点です。
あまりにもその個々の才覚に頼り過ぎて、人間はミスをするものということを考えず、チェックポイントが少ないということは改善すべき点だと思います。個々の能力を生かすことができるシステム、管理能力が高まればもっと良くなるのではないかと考えたりもします。
最後になりましたが、これまでの連載を読んでいただいた皆様に感謝致します。
また、このような機会を与えていただいた薬事日報社、特に担当編集者の方には校正等でお世話になり、ありがとうございました。
読者の皆様、薬事日報社の皆様の健康と発展を願って、稿を閉じさせていただきます。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学衛生学部卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部・臨床検査技師。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」