ボストンがあるマサチューセッツ州は緯度的に北海道とほぼ同じで、湿気もあまりなく、今の所はカラッとした夏を過ごしております。今回は休みに関連してMGH輸血部での有給休暇についてもお伝えしたいと思います。
現在は、日本でも週休二日制は定着しつつあり、この点に関しては大差ないのですが、いわゆる国民の祝日がアメリカの方が少ないのです。加えてゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始休暇のように国全体が一斉に数日間休むという習慣はありません。
MGHでは祝日が無条件な休暇というわけではなく、なんと有休休暇にカウントされるのです。ただし自ら希望する休暇ではないので、有休届けを出す必要はありませんが、給料の明細書ではしっかりearnedtimeという自分の持ち分休暇から差し引かれています。
earnedtimeはパートタイムやフルタイムなどの雇用形態によって異なりますが、例えば私のようなフルタイム勤務者ですと1週間(40時間)の勤務を行うごとに4・47時間を獲得(earn)して有給休暇時間を貯めていく形になります。
また、日本では有休休暇以外にも夏休みや年末年始休暇が別枠でありますが、そのような制度はありません。その代わり取る時期もいつでも良いので旅行料金の安い時期にvacationを取ることもできますし、休暇期間は自分の持つearnedtime次第ですので、非常に合理的です。
ただし輸血部では、6~9月にはvacationを取る人が多いため、その間だけは2週間以内という条件があります。このearnedtimeは就職後の120日間は獲得も利用することもできないので、その期間に祝日があると給料が日割りで減額されます。
やっと私もこの4月からearnedtimeがつくようになり、私の記念すべき(?)初めての有給休暇は、エアロスミスのコンサートに使いました。エアロスミスはボストン出身のロックバンドで、コンサートはボストンから車で1時間ほど南下した郊外にある野外コンサート会場のような巨大な屋根の下で行われました。
友人がコンサート開始の数時間前には着いて、「楽しまなきゃ!」と言うので、「何事かな?」と思っていたら、到着後にトランクからたくさんの食べ物と飲み物が出てきて、ピクニック気分でコンサート開始までオープンエアを楽しみました。周囲にはさらに上手もいて、バーベキューセット持参で良い匂いを周囲に充満させているグループもいました。
コンサートは、前座にチープトリックの演奏が行われ、「自分が中学・高校時代にブレイクしたバンドだ」と夫は喜んでおり、実際に唄や演奏はまだまだいけてるのに、客席はまばらでなんだかチープトリックが気の毒に思いました。
その後エアロスミスの登場でしたが、スティーブン・タイラーはやっぱりオーラが違い、満席の会場を異次元空間のように別世界へ変えてしまうパワーは圧巻でした。アンコールで素肌に純白のジャケットを羽織り、映画「Armageddon(アルマゲドン)」の主題歌「I don’t want to miss a thing」をアカペラ状態で歌い出した時には会場の興奮が頂点に達した感じでした。
ところがです、アンコールの2曲目が終わる頃には皆がぞろぞろと帰り出し、「なんで?」と思っていたら、出口渋滞でその謎は解けました。コンサートの余韻に浸るより、真夜中の渋滞を避けることの方が大事だったわけです。
あの盛り上がりから、一気に現実へ戻る切り換えの早さ……。驚くと同時に、少々笑えるような印象を受けました。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」