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坂本美佐のボストン便り No.21「秋の風物詩」

2005年11月11日 (金)

 気が早いお店では9月に入った途端にハロウィン用の飾りを店頭に出し初めますが、その飾りが10月後半にピークを迎えると、いよいよ秋本番です。

 ハロウィンって日本にいた頃は「カボチャをくり抜いて飾り、仮装をするお祭り」と表面的なことしか知りませんでした。ところが友人によると、起源はケルト族だそうで、ケルト暦での年末にあたる10月31日に出てくる、幽霊や魔女などの魔除けをすることが由来だとか。

ボストンコモンに飾られたカボチャのピラミッド。パンプキンフェスティバル当日はあいにくの小雨でしたが、大勢の家族連れで賑わっていました。

ボストンコモンに飾られたカボチャのピラミッド。パンプキンフェスティバル当日はあいにくの小雨でしたが、大勢の家族連れで賑わっていました。

 では、何か神聖なことをアメリカで行っているかと言いますと、その実態は日本同様に「カボチャをくり抜いて飾り、仮装をして楽しむお祭り」であるようです。ハロウィンは10月31日ですが、数週間前から各地でカボチャ祭りや仮装大会が行われます。ボストンコモンで10月中旬に「ギネスブックに挑戦!」もスローガンにし、カボチャが集められたパンプキンフェスティバルは多数の出し物もあり賑やかで、特にカボチャを何段にも飾ってできた巨大なピラミッドにロウソクが灯された光景は圧巻でした。このようなお祭りの中でも、アメリカで最も盛り上がる場所と言われているのは、ボストンから北へ40キロ程にあるセーラムです。

 セーラムでハロウィンが盛り上がると言われる理由の一つは、「魔女狩り」や「魔女裁判」が17世紀末にこの町であったからです。魔女狩りと言っても本当に魔女がいたのではなく、数人の少女たちによる虚言と悪戯が元で罪もない約200名が逮捕され、20名以上が命を落とした悲しい出来事でした。

 港町のセーラムはそのような悲しい出来事があったものの、貿易港として一時期はニューヨークやボストンを上回るほど繁栄しました。世界各地から集めたコレクション展示のため、1799年には全米最古の博物館であるピーボディ博物館(現・ピーボディエセックス博物館)が設立されたほどです。

 現代のセーラムはこの博物館以外に、魔女関連の博物館や展示施設が7館もあり、町としても魔女をテーマに観光に力を入れているので、ハロウィンと直接関係なくてもこの時期になると仮装をした人々で町が溢れます。

 自宅近所にコミューターレールと呼ばれる列車の始発駅である「ノースステーション」があり、セーラムへ向かう列車もこの駅から発ちます。日頃は通勤客で賑わっていますが、ハロウィン直前はまるで仮装パーティーの会場に紛れ込んだかのようで、あたかもハリーポッターにでてくるキングズクロス駅の「9と3/4番線ホーム」がこの世に存在するかのような不思議さです。

 さてハロウィン当日ですが、仮装した子供たちが「Trick or Treat」(意訳すれば“お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ”でしょうか)と言いながら近所をめぐり、お菓子を集めています。

 子供がいる友人によると、子供たちは食べ切れもしないのに沢山のお菓子を集めてしまうと愚痴をこぼしていました。子供心にはこの日の為に着飾った仮装を誉めてもらいたいし、持ち歩くカボチャ形バケツが一杯になるのは嬉しいでしょうから、集める気持ちが理解できます。

 多数集まったお菓子のおこぼれがハロウィン翌日に職場へ還元され、職場の休憩室がしばらくの間チョコレート類に満たされるのも秋の風物詩だと思っています。


 Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。

坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。

連載 坂本美佐のボストン便り



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