10月に入りボストンでは紅葉も始まり、秋本番という感じです。かなり遅めの夏休みになりましたが、earnedtimeを利用して9月下旬に訪れた、マーサーズビニヤード島とナンタケット島の話をお伝えさせていただきます。
マーサーズビニヤード島へはバスとフェリーで行き、マーサーズビニヤード島からナンタケット島へは15分の短いフライトですが飛行機で渡る予定で、ホテルの予約も済み安心していました。ところが、出発2週間ほど前に航空会社から電話があり「乗客が少ないので朝晩の2便に減らす」と言うのです。悩みましたが、朝7時半にナンタケットへ向かうフライトを選択しました。この変更、私たちに少しばかりの好運をくれたのでした。
マサチューセッツ州南東から肘を曲げたように突き出したケープコッドの南に小さな両島は位置し、それぞれが捕鯨の歴史と深く、19世紀には互いがライバルとして競っていたそうです。行くまではあまり大差はないだろうなと思っていましたが、実はそれぞれに個性のある島でした。
マーサーズビニヤード島は美しい自然が残り、多くの有名人たちの別荘があることでも知られています。島には大きな街が3つあり、2つの街には本土からのフェリーが到着するのですが、私たちが滞在したエドガータウンへは大型船の入港ができなく、ヨットやクルーザーが浮かんでいます。どの街も観光化と言いますか、商業化の印象が強いのですが、それでも華美な看板がなく控えめのイメージで古き良き街の雰囲気を残しています。
エドガータウンの中心から私たちが滞在したハーバービューホテルまでは少し距離があるのですが、その道沿いには捕鯨時代の船長たちの白い瀟洒な家が並び、優雅な雰囲気を漂わせています。優雅さとはかけ離れますが、港を眺めながらテイクアウト専門の店で買ってほおばったクラムチャウダーとロブスターロールの味は忘れられないものになりました。
ナンタケット島はサイクリングロードが充実しており、その気になれば半日で島中をサイクリングできてしまうのではないかと思う位に小さく、タイムスリップしたように古い家並みが豊かな自然と共に連なっています。ナンタケットタウンには石畳の道路が今でも残り、見所と言っても歩いて回れる範囲に集中しています。自転車を借りて誰もいない秋の海までサイクリングしてきましたが、そののどかさと静けさが心地よく印象的でした。島には信号が一基もないのですが、交差点で車がお互い譲り合う姿とそのスムーズさには感嘆です。
滞在したホワイトエレファントという一風変わった名のホテルは、満室にもかかわらず静かで、ホテルマンはにこやか、親身なコンシェルジェからは私たちが有意義に過ごせるようにアドバイスをもらい、ゆったりした時間の流れを感じるナンタケット島がとっても気に入りました。
到着の翌日から運悪くハリケーンの影響でほぼ丸2日間ホテルに缶詰め状態になり、もしフライトスケジュールの変更で朝にナンタケット島へ着いていなかったら、この素晴らしい島を知ることなく帰るところだったのですから、運が悪いなかにも少しは運があったのかも知れません。
ハリケーンの影響で本土へ戻るフェリーは欠航し、飛行機もスケジュールがドンドン狂い、全くフライトのメドも立ちません。やっと運航が再開したものの、横殴りの嵐の中を歩いて8人乗りのセスナに乗り込み、ずぶ濡れのままボストンへ戻って来ました。やっぱり近そうで遠かった2つの島でした。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」