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坂本美佐のボストン便り No.16「テスト?」

2005年06月11日 (土)
近所にあるPublic Gardenは植物園として、四季折々の表情を見せてくれます。例年はすぐに散ってしまうチューリップも寒さのせいか今年は長い間楽しませてくれました。

近所にあるPublic Gardenは植物園として、四季折々の表情を見せてくれます。例年はすぐに散ってしまうチューリップも寒さのせいか今年は長い間楽しませてくれました。

 5月に入ってもなかなか暖かくならない上に連日の雨で、今年の春は異常なのかな?と思っていましたら、133年ぶりに寒い5月の記録を塗り替えたとニュースが伝えていましたので、やはりボストン地域では寒い春であったようです。

 暑さ寒さとは関係なく半年に一度、Competency Assessmentという業務内容に関する質問表がスタッフに渡されます。質問項目はSOP(Standard Operation Procedure,標準作業手順書)に全て記載されていることで、SOPを見れば回答可能な内容です。SOPは至るところに置かれているので、いつでもどこでも確認できることは、このような機会はもちろん、何かあった際にもすぐ見ることができて助かります。

 提出までの期間は2週間程度あり、試験ではありませんのでSOPを見ながら記載しても良く、疑問点があればSupervisorに聞くことも可能であり、特に点数がつけられることもありません。提出期限終了後には正解用紙が張り出され、多くの人が間違ったような業務内容は再確認のために伝言版ノートに記載されたり、1ヵ月に一度ある輸血部ミーティングで説明があります。

 質問事項は毎回異なり、前回(昨年12月頃)は冷凍血液やその解凍、赤血球製剤洗浄や血小板製剤の血漿成分の除去、ドナー検体検査、MGH採血製剤のラベリングから在庫として扱うまでの手順についての質問内容でした。

 今回は主に患者の輸血検査と血液製剤出庫に関する質問で、レターサイズ(A4サイズ大)の用紙で8枚あり、一例を少し紹介します。

  • 「CMV reduced risk」の必要な患者への血液製剤の選択にはどのような製剤を選択すべきか?
  • DAT(直接クームス試験)が偽陰性になる場合の原因を3つ書きなさい。
  • 37℃で反応する抗M抗体が検出された患者への交差適合試験の方法は?M抗原陰性の製剤を検索しなければならないか?
  • ABO不適合による新生児溶血性疾患の解離試験に最適な解離方法は?

 これらの質問事項は前述したように全てSOPに記載されている項目なので、試験というよりも業務手順の再確認という意味合いが強いです。

 新しいSOPが作成された際やSOPが変更された場合は、全ての技師は読んで理解したというサインをする義務があるので、その都度SOPが回覧され、熟読しないといけません。しかし、既に頭に入っている通常業務では、確認したい時や滅多に起こらない状況の場合以外には、SOPを再読する機会はあまりないのが現実ですので、Competency Assessmentは慎重にSOPを読む貴重な機会です。

 実際に正しい答えを探そうとSOPを読んでいるうちに、質問内容以外のことも再確認できたり、滅多に遭遇しないことに関する正しい業務手順を読む機会を得たりできますので、SOPの理解と把握に関してとても良い機会を得ることができます。

 驚いたことに、同僚たちは黙々と各自でSOPを調べて回答し、お互いに答えを教えあったり丸写しするような人は誰一人いません。その姿にアメリカ人の真面目な一面を垣間見ることができます。

 半年に一度ではありますが質問に回答していく作業は、面倒くさいと思いながらも、学生気分に戻り意外にいいものです。


 Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。

坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。

連載 坂本美佐のボストン便り



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