
MGHの中庭に今年も綺麗に咲いた桜の前にて。この桜はMGHに入院されていた日本人の患者さんから寄贈されたそうです。あっと言う間に咲いてあっという間に散ってしまいました。
病院の中庭にある桜が今年も見事に咲き、ボストンへも春が来たことをやっと実感できる陽気になりました。今回はマサチューセッツ総合病院・輸血部のBlood Donor Centerについて紹介します。
マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital, MGH)に20棟近くある建物の一つである、グレイビルディング(Gray Building)の1階と2階が輸血部となり、私のいる2階は輸血検査(ドナー検体検査室を含む)を主に行っています。1階は献血室(Blood Donor Center)、採血後の製剤を赤血球製剤・血小板製剤・血漿製剤に分離する製剤室、外来患者への輸血を行う外来患者輸血室があります。
Blood Donor Centerは月~金曜日に業務を行っており、訪れるドナーの多くは職員です。血小板アフェレーシスの採血も実施しており、血小板製剤が少ない時は、土曜日にも血小板アフェレーシスの採血を実施することがあります。また2台の献血車も所有して常時院外での献血も行っており、時には大きな手術が予定されている患者さんが勤める会社や学校等に献血車が出向く場合もあります。
献血の前に行う献血者への問診は個室で行い、問診後には問診を行った担当者だけでなく献血者本人の自筆のサインも問診票に残します。この意味は質問の内容について十分に説明を受けて理解し、それに対する回答に献血者も虚偽の申告がない等の責任を示す為です。
Blood Donor Centerの入り口には、先日まで大きく「Don’t take a gamble on someone’s life(誰かの命でギャンブルをするな)」と掲げてありました。つまり自分の血液の安全性に自信がないなら献血を自重して欲しいという意味で、当然のことではあるもののその文字の大きさと内容に、私は驚きを隠せませんでした。
MGHでの輸血実施数におけるMGHの献血数は、約3分の1以上を占めます。1例を挙げますと2004年度の1年間に輸血された赤血球製剤数は、約3万2500本(全て400mL由来)で、その内の約1万2600本はMGHで献血された製剤でした。また血小板アフェレーシスは約3670本のうち約1660本がMGHドナー製剤でした。購入製剤は主にAmerican Red Cross,ARCから購入していますが、ARCに在庫がない場合等は隣の州にあるRhode Island Blood Centerから購入することもあります。血液製剤を供給する団体が複数存在している点は、日本との大きな違いだと思います。
先にも述べましたがBlood Donor Centerでのドナーの多くは職員で、病院の規定で献血は就業時間内に行ってもよいこととなっています。同じ医療法人下であるBrighamand Women’s Hospital,BWHの輸血部と1ヵ月間の職員献血数を競い合う月が毎年あり、院内には「レースに勝とう!」というポスターが貼られます。職員数はMGHの方が多いので勝つのは当然で、万が一負けるようなことがあれば一大事だとSupervisorが言っていました。このレースの意味はおそらく、勝ち負けでなく職員への献血の啓蒙活動と思います。
また、献血者の中から抽選で「ラスベガスまでのペアでの往復航空券と宿泊券」や「カリブ海クルーズ」がプレゼントされるキャンペーンも行われ、その時には病院内の至るところにポスターが貼られて大々的に宣伝されました。そのポスターのモデルは、頻繁に血小板アフェレーシスの献血を行っている上司でもあり友人でもあるKimberyでした。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」