
旧ボストン市庁舎(Old City Hall)は1862年に建てられ、1969年まで使用されておりました。歴史的建造物に指定され、広場では独立当初の衣装で演奏が行われることもあります。
ボストンがあるニューイングランド地方の夏は短いのですが、今年は特に短く感じました。湿気もなく過ごし易かったのですが、「暑い日差しがいつ来るのかな?」と思っている間に、秋の気配を感じてしまい拍子抜けしてしまった感じです。
季節とは全く関係ありませんが、以前から気になっていた院内にある“Patient and Family Learning Center”を訪れてみました。
同Centerは、Massachusetts General Hospital(MGH)内に1998年に開設された比較的新しい施設で、文字通り患者さんとその家族が疾患や健康維持について学習できる部屋になっています。正面玄関を入ってすぐの所で、人通りが多い一画にあるのですが、一歩足を踏み入れると静寂が待っています。
月曜から金曜の午前9時半~午後6時半に加え、土曜日も午前11時~午後3時まで開設され、看護師と健康相談員、ボランティアスタッフが常駐して、利用者の手助けをしてくれます。利用者の制限はなく、入院患者や外来患者に限らず、どなたでも無料で利用できます。
室内には参考本として医療スタッフが読むような総論が述べられた専門書から、一般向けの啓蒙書まで500冊以上が常備され、医療ビデオが150本以上、医療・健康関連雑誌の30種類以上に加え、FDAや政府をはじめ、各種医学関連学会から一般向けに出ているパンフレットも250種類以上が常備されております。
また、院内のイントラネットにもアクセス可能なコンピュータが数台あり、インターネットは当然のこと、MGHの図書館が有する医学情報も利用可能です。これだけの情報が、まるで書斎のようなイメージで、ボストンチェリーの格調ある内装や調度品とともに用意されているので、病院にいることを一瞬忘れてしまいそうです。
この部屋はいわば自己学習室として開設され、以下のことができるように、前述したスタッフが調べ方の疑問点に的確にアドバイスし、自分の知りたい情報を入手しやすくしてくれます。
- 自分や家族の健康や疾患について理解する。
- 治療方針を理解する。
- 健康維持や改善のためのよい方法を見つける。
- 医師や看護師など医療スタッフとコミュニケーションを良くする。
確かに、医療を受ける際、疾患や治療方法について理解することは、とても有意義であるとは分かっていても、的確な情報を得るのは難しく、医学書は日本同様に高価です。図書館などに足を運ぶ必要がなく、入院中や受診前後に院内で調べることができるこの施設の存在は、患者サービスの点でも大きな役割を果たしていると思います。
実は、自分で調べても上手く情報が探せない事項があったので、早速スタッフに相談してみました。数分後、「あなたの探していた情報はこのことですよ」と、カラー印刷された図と共に届けてくれ、さっと席に戻って行かれました。
その姿は、あくまで情報を探す手伝いに徹している印象です。昨今ではインターネットの普及により、いろいろな情報が得やすくなったとはいえ、それが正確なものかどうかは素人には判断できないこともあります。
そんな時、正しい情報を探す手助けをしてくれるサービスは利用者に安心感を与えてくれます。このスタッフの手際良さが、相談所ではなく学習室として、この部屋の存在価値を高めていると感じました。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」