日本では4月に始まり翌年の3月までが単一年度となっていて、学校や仕事もそれを一つの目安に社会全体が動いていて、分かりやすい感じです。ご存じの方も多いかと思いますが、アメリカで多くの学校は新年度が9月に始まり、卒業時期は5~7月頃です。毎年8月中旬になると「Back to school」という言葉をよく耳にし、新聞やテレビでもBack to schoolセールと銘打って、文房具や衣類の広告を見かけ、「あー今年も新学期が始まるなー」と感じます。
では、アメリカ社会全体が9月を区切りに動いているかというと、そうではないようです。例えば病院の臨床現場が慌ただしくなるのは、6月下旬から7月初旬にかけてです。それはレジデントと呼ばれる研修医履修課程や、クリニカルフェローと呼ばれる専門医取得のプログラムが7月1日から始まり、6月末日に終了するからです。
もう一つ区切りの時期があります。それは主に事務仕事の方々がとてもキリキリする、会計年度の区切りとなる9月末です。新会計年度は2007年度分として10月1日から始まるので、年末までの2ヵ月間はちょっと不思議な感覚で過ごすことになります。
この時期になると昨年度の各種統計結果が発表され、ちょうど先日Massachusetts General Hospital(MGH)から一般向けに冊子が配布されましたので、今回は少しそれを紹介したいと思います。
冊子はA4大で、まるで写真集のような表紙で始まり全面カラー印刷で30頁ほどです。2005年度の会計収支、患者数等の報告を兼ねていますが、MGHで何があったか、今後どのようにMGHが進んでいきたいかについての説明に多くが費やされ、一種の広報用パンフレットを兼ねた感じで、院内の至る所で配布されました。
冊子では正確な数値が示されており、様々な会計報告とともにグラフを用いて過去との比較もされています。一部を紹介すると、ベッド数は899床で平均稼働率が81%、平均入院日数が約6日となっております。また2005年度にMGHでは一日に平均して10名の出生があったそうです。年間手術数は約3万5000件で、入院しての手術が1万9000件、外来手術が1万6000件といかに外来手術の割合が多いか理解できます。
外来手術といえば、友人がMGHで乳癌切除手術した際、手術当日の朝に来院してその日に帰宅したことには驚きました。外来患者は約100万6000名、緊急外来患者は約7万6000名とのことです。
総職員数は約2万500名で、医師・薬剤師・臨床検査技師・放射線技師等の臨床スタッフ約2700名に加え、看護師が常勤で約3000名と非常勤で約300名、研修医が約900名と専門医課程の医師が約500名在籍しているようです。
冊子によると、MGHの特徴は研究面にも力を入れていることであり、病院としての研究規模は全米最大だそうで、ハーバード大学所属の教授をはじめとする教員が多数在籍し、リサーチフェローと呼ばれる研究者も約1000名在籍しています。その年間研究費用は約40億円程だそうで、その金額が多いかは私にはわかりませんが、MGH内に研究棟ビルが複数ありますので、確かに研究面にも力を入れていることは分かります。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」