ボストンがあるアメリカ東海岸北部では、日本とは少し趣が異なりますが紅葉を綺麗に見ることができます。紅葉が綺麗になる季節は既に肌寒くなった頃ですが、今年のボストンの秋は熱い季節になっています。
野球のアメリカンリーグ決勝戦はボストン・レッドソックスがニューヨーク・ヤンキースに3連敗後の4連勝という、歴史的な大逆転でワールドシリーズ出場権利を得ました。ヤンキースとレッドソックスの確執は大正時代までさかのぼり、1920年にベーブルースがヤンキースに金銭トレードに出されて以来、一度もワールドシリーズでチャンピオンになれない「ベーブルースの呪縛」との伝説があるほどでしたから、ヤンキースを破った時点で既にお祭り騒ぎでした。
20年と言えばシスラー選手が256安打を放った年で、イチロー選手がその記録を今年やぶりましたので、同年にもう一つ封印された「ベーブルースの呪縛」も開けて、レッドソックスが今年はチャンピオンになるのでは?との迷信に対する迷信もありました。
見事にパンドラの箱は開いたようで、100回目を迎えたワールドシリーズではセントルイス・カージナルスを相手に無傷の4連勝でチャンピオンに輝きました。ベーブルースがまだ在籍していた18年以来、実に86年ぶりの優勝ですからボストニアンの盛り上がりも尋常ではありません。優勝が決まるまで、本当に熱い熱い秋でした。
もう一つの「熱い秋」、これはボストンだけに限ったことではなかったと思いますが、大統領選挙は最後の最後まで接戦が演じられました。選挙の終盤にはブッシュ大統領とケリー候補の直接討論が3回、副大統領候補同士の討論も入れると計4回の討論会が数日間隔で行われ、その模様は生中継で全米へ放送されました。これが一つのチャンネルだけでなく、チャンネルを変えても変えてもほとんどのチャンネルで放送されていることには驚きました。
もっと驚いたのは翌朝です。職場では多くの同僚が前夜の討論会について、討論とまでは行かないにしろ、互いの印象を述べ合っていたのです。国の代表を選ぶ際に、自分たちの意志を反映できるのですから討論を見る方も真剣になってしまいますよね。
討論は東部時間の夜9時に始まり、なんでこんなに遅い時間に?と思ったのですが、3時間の時差がある西海岸では夕方6時になり、全米の人々がなるべく多く視聴できるためだそうです。そう言われてみれば、ボストンでの民主党大会もニューヨークでの共和党大会も大物の演説は東部時間の夜10時頃にあり、国土が広いと大変だなと感じました。
放送時間と言えば、冒頭でお伝えした大リーグのワールドシリーズも東部時間の夜8時過ぎに始まり、試合終了は深夜12時近く、時には午前様にもなりました。私は翌日を思っていつも通り就寝しましたが、同僚たちは試合終了まで観ており、あまりの熱の入れようで、睡眠不足になるし仕事中は野球の話ばかりになるので、勝ち進まずにヤンキースがワールドシリーズに行ってくれれば……と、一度は不届きなことを思いましたが、地元チームがチャンピオンになったらやっぱり嬉しいものです。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」