アメリカで最も盛り上がるイベントと言えば独立記念日です。直訳すれば「Independenceday」で同名の映画が数年前にヒットしましたが、こちらでは4th of JulyとかJuly 4thと固有名詞のように呼ぶことが多いです。
独立記念日は、マサチューセッツ州を含む東部13州植民地の代表からなるアメリカ大陸会議で、「独立宣言書」に署名を行った日が1776年の7月4日であったことに由来するそうです。
高額な納税にもかかわらず参政権の無視など、本国イギリスへの不満が高まっていたところへ、イギリスで余った紅茶をアメリカへ売るという条例が本国で決まり、大量の紅茶を積んだ船が植民地のボストン港に入りました。これに怒ったアメリカ植民たちがインディアンに変装し、船を襲って紅茶を海に投げ捨てた「ボストン茶会事件」が1773年12月16日に起こり、独立戦争への引き金となりました。
やがて1775年4月19日には、ボストン近郊のレキシントンでイギリス軍と植民地(アメリカ)軍の戦いが起こり、本格的な独立戦争が始まったと言われています。
この前夜にイギリス軍の襲来に気付き、植民地軍がいるレキシントンへ真夜中に馬で走ったのがポール・リビアで、ボストンマラソンはこのコースを模して当初は始まったそうです。独立戦争は8年に及び、1783年にパリ条約が結ばれてアメリカは正式に独立しました。
7月4日を祝うようになったのは、1812年戦争(米英戦争)以降のようです。米英戦争時に活躍した軍艦の一隻であるUSSコンスティテューション号は、木製にもかかわらず激戦でも耐えた不沈艦として今でもボストン湾に停泊しています。現在は観光用として停泊したままですが、年に一度、独立記念日に出航し向きを変えて戻ってきます。

独立記念日コンサート以外にもたくさんの行事が行われます。写真は旧州会議事堂で行われた独立宣言宣誓式の再現後、独立軍当時の装束で行われたパレードの様子です。
観光用資料をもとに知ったかぶりのことを書いてきましたが、ボストンはこのようにアメリカ独立へ深くかかわっていただけあり、独立記念日の行事は地方都市ながら盛大に行われます。その極めつけはなんと言ってもチャールズリバー沿いにあるハッチメモリアルシェルでのボストンポップスによるコンサートと、それに続く花火大会!
コンサートは無料で夜8時半からですが、朝7時半の開門時には既に長蛇の列で、厳しいセキュリティーチェックを受けた入場後はピクニック気分で夜まで待ちます。さあコンサートが始まると言う時に合わせ、ケープコッド空軍基地から4機のF15がグリーティング飛行として会場上空を飛び去り、会場の雰囲気を一気に盛り上げます。
毎年異なったゲストも招かれ、昨年はロックバンドのヴァン・ヘイレンのボーカルであるデイヴィッド・リー・ロスが登場し、有名な「Jump」を生で聴けた時には感動モノでした。ゲスト以外の目玉はチャイコフスキーの「1812 Overture」で、楽譜通りに本物の大砲が放たれるのも野外コンサートならでは。この時ばかりは、散歩の時に横を通るあの大砲が本物であることを実感します。
コンサートは「The Stars and Stripes Forever!」で華やかに終えますが、この曲に合わせてまるでダンスのように花火が打ち上げられれば、花火大会の始まりです。
生演奏に合わせるのは最初のみですが、残りの花火も全て音楽にのせスローなバラードの時には優雅に、激しいロックのような曲ではスターマインがこれでもかと連続して続き、あっという間に20分程のプログラムは終わってしまいます。
日本の芸術的な花火と違い、とにかく勢いと数で勝負!と言う感じですが、音楽と共に見る花火は、夢見心地の気分にさせてくれます。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」