初夏のある日、MGHの中庭がまるで子供たちに占領されたかのように、元気な声が響いておりました。当日は小さな子供たちを招いてMassachusetts General Hospital for Childrenのイベントが開かれていたのです。
外来棟へ横付けできる道路には、町中でよく見かける黄色いスクールバスが何台も到着し、子供たちが次々と降りてきます。子供たちが向かう先のエーテルドーム前には巨大なテントが張られており、テントの中には子供たちの興味を引くような様々なブースが設置されていました。
例えば、子供大の縫いぐるみが手術台にのり、子供たちが手術着やマスクを纏いさながら子供版ERが再現された一角、心臓のゴム製実物大模型を手で触れる一角、血液成分をマンガを用いて紹介した一角など多数のブースが設置され、子供たちに体の仕組みをわかってもらうイベントでした。
これはMGH for Childrencenterという小児センターの存在を知ってもらうことももちろんですが、子供たちが持つ病院や医療スタッフへの怖いイメージを和らげるという社会への還元サービスの一つでもあります。このイベントにはさすがに驚きましたが、また別の日には変わったサービスもありました。
話が少しずれますが、こちらに住んでみるとアメリカンフットボール人気が非常に高いことを実感します。ボストンにもニューイングランド・パトリオッツというチームがあり、今年の2月1日に開かれたスーパーボールを制してアメリカンチャンピオンに輝きました。その優勝パレードには150万人が集まったほど、絶大な人気を誇ります。
そのパトリオッツから選手をMGHへ招き、入院患者や病院職員との握手会と写真撮影会を行うといったイベントも数回開かれました。紹介したイベント以外にも対外的なサービスの色合いが濃いイベントは時折開かれておりますが、完全に職員へ向けたサービスもあります。
またまた話がずれますが、やはり大リーグの人気は高く、特に地元のレッドソックスへの人気は大変な熱があります。レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ球場は全米最古の球場である上に、観客収容数も最少で、なかなかチケットが取れないことは知っていましたので、私たちは開幕戦が始まる3月にチケットを取りに行ったのですが、なんと9月まで2名分の連席を買うことができないという販売状況でした。
「今年の大リーグ観戦は無理だな」と諦めていたところ、MGHが職員のためにチケットをある程度購入してあったのです。そのチケットは全て抽選で販売するのですが、1回目の販売は私たちが購入できなかったマリナーズ戦。それも金曜日のナイターでライトスタンド!
そう、イチロー選手を間近で見ることもできるのです。職員は1人1回だけ応募できるので、私と主人それぞれの名前で応募しておきましたら10倍の確率の中で幸いなことに主人へ購入権利が当選しました。MGHのモットーの1つに職員への満足が挙げられておりますが、このような粋なサービスは嬉しいものです。
さて試合ですが、イチロー選手が打席に立つ度に起こる大ブーイングに驚くとともに、ムッとしてしまったのですが、ブーイングが起こるのはイチロー選手以外には4番のブーン選手だけと気付き、「あっこれは完全にイチロー選手はアメリカでも認められている証拠だなと」いうことを実感しました。
ゲーム内容は、レッドソックスの満塁ホームランを含む3本のホームランが飛び交う乱打戦に加え、イチロー選手の複数のヒットや盗塁も目の当たりにすることができ、とても楽しめた一戦でした。
今回はMGHのサービスにはいろいろあることを自身の体験を交えた報告でした。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」