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坂本美佐のボストン便り No.39「州民皆保険制度」

2007年6月16日 (土)

イタリア人街とも言われるNorth Endへ向かうフリーダムトレイルの一コマ。高層ビル群を背景に、1826年創業のレストランなど古い建物が続き、新旧入り交じったボストンを実感できます。

イタリア人街とも言われるNorth Endへ向かうフリーダムトレイルの一コマ。高層ビル群を背景に、1826年創業のレストランなど古い建物が続き、新旧入り交じったボストンを実感できます。

 5月上旬、マサチューセッツ州から“納税者様”との書きだしでハガキが届きました。そこには2007年7月1日からマサチューセッツ州で18歳以上の住人は、基本的に医療保険を有することが法律で義務づけられること、納税者が医療保険を購入していない場合は、罰則として税金の還付が減ること(結果的に罰金に相当)などの旨が記載されていました。また、医療保険を現在持っていない人には、州が相談にのり、医療保険の斡旋も行うとも書かれていました。

 この法律は06年4月に当時の州知事が署名し、アメリカで初めて州民皆保険制度が施行されるとのことで話題になりました。資料によると、マサチューセッツ州では約9%の人が無保険だそうですが、今回の法律によりその比率を1%にまで下げることが目標のようです。

 公的医療保険には高齢者向けMedicareと、低所得者向けのMedicaidがありますが、それ以外の多くの人は、以前に紹介したように、民間医療保険を各自で購入する必要があります。

 皆保険制度というと、日本のように公的医療保険で手厚く保護してくれるかのように思えますが、そうではありません。マサチューセッツ州の皆保険が法律化といっても、州が公的医療保険を新たに作成したのではなく、会社や個人への補助金制度、医療保険会社に廉価な保険プランの提供を促したり、医療保険未加入者に罰則を設けるなど、日本とは様子がかなり異なります。

 アメリカで無保険者の割合が高いのは、高価な医療保険代が原因と言われています。職場経由で購入できる保険の資料がありますので参考までにお伝えしますと、毎月の掛け金は一人あたりで$395から$760までと多岐にわたっております。高額な保険の支払額には躊躇しますが、雇われている場合には一定額を雇用主が補助してくれますので、実際の支払額はその差額分だけになります。無職の場合や、個人事業主の場合などは全額が自己負担になりますので、高額な保険代がネックで保険購入を見合わせてしまうというのも理解できます。

 受診時の自己負担額が多く、毎月の掛け金が安いプランを選択すれば、健康な間は節約できますが、医療費そのものが日本より高額ですので、たとえ2割負担と言っても金額はそれなりにかかってしまいます。また、医師に処方してもらう薬も保険によって異なります。夫が処方せんを持って薬局を訪れた際に「あなたの保険だとこの薬はカバーされず高額になりますので、一度担当医に確認することを勧めます」と言われ、担当医に確認して、新しい処方せんを書いてもらったそうです。

 私自身が現在患者となって実感しているのが、一人の患者にかかわるスタッフの多さ、医師との面談時間の多さ、また感染防止のために用いるディスポーザブル器具や手袋の多さです。これらを見れば、医療費が高価なのも分かります。良い医療、安全な医療を施すにはそれなりの出費が必要ということでしょう。

 日本は自己負担額が上がったと言っても法外な金額ではありませんし、公的な保険もアメリカより充実していて、利用する側にとっては、どの医療施設にもかかることが可能な手厚い日本の医療保険制度の方が良いかも知れません。

 しかし、マンパワーの数がアメリカより不足している上、医療費削減が推し進められる日本で良質な医療を提供することは、医療を提供する側にとって、かなり厳しいことのように思います。


坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学衛生学部卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部・臨床検査技師。

連載 坂本美佐のボストン便り




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