ニューヨークなどの大都市には及びませんが、ボストンにも何軒か日本の食料品を扱っているお店があります。数年前に利用していた頃は、日本人客の比率が圧倒的に多い記憶があったのですが、昨年の再渡米後に久しぶりに訪れた際には、日本人以外のお客さんの比率が多かったことが印象的でした。
Last SamuraiKill Bill2やLost in Translation(アメリカでは2003年に封切り)など日本を素材にした映画のヒットによる一時的なブームかな?と思っていたのですが、どうも一過性ではない気が最近はしてきました。
そう言われてみれば、以前いた頃より、MGHのカフェテリアでは毎週金曜日に寿司の実演販売があるのですが、それを楽しみにしている同僚もおります。蛇足ですが、アボガドと穴子の巻き寿司を友人に勧められ、意外と美味しかったので一時期はまってしまった私です。
全米で最古の日本人協会がボストンにはあるそうで、今年はその百周年に当たるため、その記念事業も関係しているとは思いますが、日本関連の催しが身近に感じられるのです。
Museum of Fine Artsと呼ばれるボストン美術館は、岡倉天心が関与していたこともあり日本美術品は豊富なのですが、それに加えて特別展として先日まで日本の絵はがき展を開催していました。他にも魔女狩りで有名なSalem市にある、Peabody Essex Museumという美術館ではその名もズバリ「Geisha」と銘打ったプロ写真家の撮影による芸者さんの写真展が数カ月開催され、ハーバード大学のフィルム保存部では小津安二郎の生誕百周年を記念して約一カ月に及ぶ小津作品の上映会、ボストン子供博物館では日本の子供部屋を実物大で複数作製した疑似体験で日本を紹介する場が設けられております。
その極めつけはなんといっても、中村勘九郎が率いる「平成中村座」による歌舞伎のボストン公演でした。この公演はボストンを皮切りにニューヨークやワシントンDCでも行われます。歌舞伎のアメリカ公演ということで、もしかしたら日本でもご存じの方がいらっしゃるかも知れません。
恥ずかしながら、私たちは日本ではなかなか歌舞伎鑑賞に縁がなく、これを機会にぜひ見てみようと早々とチケットを購入して間近で舞台を見て来ました。当日はガラガラかなと想像していたのですが、会場が3階まで埋まっていて驚くと同時になぜか嬉しさを感じました。
公演は日本語で演じられていたため、「日本人以外の観客の人たちは楽しんでいるのかな?」と、出演者でもない私が心配しても仕方ないのに上演中はずっと気になってしまいました。ところが、すぐ後ろでは着物の羽織をジャッケット代わりに着ていた金髪のご婦人が、同伴の方たちに内容を説明していて、歌舞伎ファンのアメリカ人もいることを知り、安心しました。

ハッチメモリアルシェルで、ラジオ局主催のロックコンサート開始前の風景。開始までたっぷり時間がありますが、ピクニック気分で昼間から待ち時間も楽しんでしまいます。
日本のことばかりお伝えするのも変な感じですので、最近のボストンのことにも最後に少し触れたいと思います。近所のチャールズ河エスペランド公園には、ハッチメモリアルシェルという野外ステージが芝生に覆われた広場にあります。そのハッチメモリアルシェルでは、夏になるとクラッシックやロックのコンサートだけでなく映画会なども頻繁に開催されます。
私たちは、平日は行けないのですが週末は折りたたみ椅子、食べ物、クーラーボックス持参で野外コンサートを楽しんでいます。夕日が綺麗な頃から始まって、夜風に吹かれながら聴いていると、苦労を承知で再渡米したものの、やっぱり来てよかったかな?と思える貴重なひとときです。
驚くことに、これらハッチメモリアルシェルでの公演は全て無料で楽しめるというのですから、ボストンの懐の深さを実感します。
Medical Academy NEWSで好評連載中「坂本美佐のボストン便り」は、マサチューセッツ総合病院の臨床検査技師である坂本美佐さんからの「お便り」です。病院での仕事はもちろん、“フェンウェイ球場で起こるイチローへの大ブーイング”など、硬軟おりまぜた幅広い話題で楽しめますのでご覧ください。
坂本美佐氏 1988年藤田保健衛生大学卒。藤田保健衛生大学病院、愛知県赤十字血液センターなどで輸血検査に携わり、現マサチューセッツ総合病院輸血部。
連載 坂本美佐のボストン便り
- No.42「最終回」
- No.41「手術しました」
- No.40「やっぱり黄色」
- No.39「州民皆保険制度」
- No.38「患者となって」
- No.37「カードがいっぱい」
- No.36「不思議の国の……」
- No.35「両刃の剣」
- No.34「サンクスギビングデー」
- No.33「カーシェアリング」
- No.32「いつから新年度?」
- No.31「病院に学習室?」
- No.30「Give me a hug」
- No.29「レクチャー」
- No.28「ナンタケット」
- No.27「Lab Week」
- No.26「笑う門には……」
- No.25「働きざかり」
- No.24「ピアノマン」
- No.23「パーティー」
- No.22「予期せぬこと」
- No.21「秋の風物詩」
- No.20「受診するのも大変」
- No.19「MOVIN’ OUT」
- No.18「病院にベルマン」
- No.17「The Fourth of July」
- No.16「テスト?」
- No.15「Blood Donor Center」
- No.14「サマータイム」
- No.13「文化の違い?」
- No.12「難しいタイミング」
- No.11「勤務通信簿!」
- No.10「査察!」
- No.9「秋なのに熱いボストン」
- No.8「近そうで遠い」
- No.7「Early bird」
- No.6「日本ブーム?」
- No.5「VACATION!」
- No.4「MGHのサービス」
- No.3「ご近所様は?」
- No.2「冬のあとには」
- No.1「はじまりはいつも……」