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【インド薬業事情】第6回 インドの医薬品流通

2007年07月10日 (火)

 インドでは医薬分業が当然のこととして確立されている。また、医療用医薬品の包装形態も欧米と同様で、薬局において患者に渡す分量でパッケージされており、日本の様な「ハサミ調剤」は行われない。前回の薬価に関する記述の中で例示されていた10錠当たりの価格というのも、その10錠入りの箱の表面に「MRP: 32 Rps」(最高小売価格:32ルピー)と印刷されているので、患者はそれ以上高く支払うことはない。

 メーカーの工場から出荷された医薬品が薬局等で患者の手に渡るまでの流れを見てみると、日本や欧米諸国と大差は無い。

 メーカーで製造された医療用医薬品は「C&F(Clearing and Forwarding)」と呼ばれる倉庫業者に送られる。日本ではメーカーが配送センターを有する場合が多いが、日本の8.7倍の国土を持つインドでは、全土をカバーする大手メーカーにおいても外部の倉庫業者を使うのが一般的である。

 その後注文に応じてC&Fから「Stockist(医薬品卸やそのデポ)」に配送される。この点は日本と全く同様である。更に医薬品卸及びデポから薬局や医療機関へと配達される点も日本と同様である。但し、「Stockist」の役割は日本よりも欧米に近く、配達のみであり、プロモーション活動は行わない。現実論として、如何に教育の進んでいるインドとは言え、「Stockist」の営業社員に医薬品の教育まで行うことは困難であるというのも理由の一つであると考えられるが、ある意味では役割が分担されており先進的と言えるかも知れない。

 先に日本の8.7倍の国土と書いたが、これをカバーするのであるから流通のスケールも大きい。C&Fは全国に数十軒有り、卸及びそのデポが約18,000軒有る。これらによってカバーされるのは国立病院や医療センターが約20,000軒、その他の病院・クリニックが約500,000軒、薬局が約230,000軒と言われており、その他にNGO等の団体が有する施設も有る。

 それぞれで使用される医薬品の比率は国立病院や医療センターが10~12%、病院・クリニックでの自家消費分が3~4%、処方箋により薬局で出される分が80~85%、その他にNGO等で使用される分が1~2%と言われている。

 我々日本人が勘違いし易いのは国立病院や医療センターの存在である。日本だとこれらの施設は高度先進医療を担う機関でもあるため上市されたばかりの新薬が大量に使われるが、インドではこれらの施設は国民に幅広く医療を施し場合によっては貧民救済のために存在するため、ここでは新薬よりもむしろ低価格で治療上必須となる医薬品が多く使われている。この一点を除けばインドの医薬品流通形態は欧米とほぼ同様に考えて良さそうである。


トレント・ファーマ株式会社
代表取締役社長・黒木俊光

連載 インド薬業事情



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