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【医療2.0《医療とWEB2.0》】第5回 ミッション「3000万円を元手にメディカル分野で1000億企業を立上げよ!」 1

2007年11月28日 (水)

 今回は起業家を志すつもりで、ビジネスチャンスを探ってみようという企画です。

 ある著名なベンチャーキャピタリストが「メディカルの分野からほぼ間違いなく数年以内に時価総額1000億円企業が3つ程度生まれる」と予測していました。しかし、未だその萌芽を見ることが出来ない状態です。1000億企業のSEEDはどこにあるのでしょう。私は3つ見つけましたが・・・というお話。とその前に既にある1000億企業をご紹介します。


1000億企業「ソネットエムスリー」

 既に生まれた時価総額1000億企業、ソネットエムスリー。主軸サービスは「MR君」「QOL君」。約15万人の医師会員に対するインターネットを通じた医薬情報提供と、医師の富裕層という側面に着目した高付加価値サービスの情報提供を行っています。

 さて。製薬企業にとってみればMRの維持コストは1人当たり約2000万円。日本には約5万人のMRがいるため、2000万円×5万円=1兆円の費用がかかっています。ここにインターネットを活用した「e-ディテーリング」を持ち込むことでMRが属人的に行っている情報提供に関するコストを削減できますよ。というのがエムスリーの主張。製薬企業にとっては医師は最大の顧客なので医師を囲っているエムスリーは非常に有難いパートナーなのですね。

 ただ、実際には情報提供のコスト削減よりも、医師を顧客としてビジネスを行っている製薬企業・医師転職支援企業・高付加価値サービス提供会社が営業力向上のために同社の媒体を活用しているようです。ということは、社会的意義の部分ではMRコスト削減よりも、医師にお金の使い道をあれこれ教えてあげることで医師が持つカネの回転率を高める、つまりカネという財の効率流通を支援しているという意味合いが強くなるでしょうか。ともあれ矛盾をはらみながらも成長を続けています。

 ※エムスリーは素敵な企業で、エムスリーの理想が現実化しないのは、製薬企業の経営者が「1人の医師に時に何人もの各社担当MRが張り付く事態を異常だ、社会全体を考えた場合、これは有効な人的資源配分ではない、なんとかしなければ」と考えたとしても、自社だけMRを減らすわけにもいかず、もはや戻れない競争の構図へと陥っているからです。

 また、MRがMRを辞めた場合、同じ給料・処遇で働ける場を見つけるのは困難です。米国大手製薬企業のような大幅なリストラもないでしょう。エムスリーの理想が実現するのは少子化やMRという職業の人気がなくなる、などの外部要因に頼らざるを得ません。事業としての成功と志の成就は別問題。それでもやらないよりやった方が断然良い。コスト削減という当初の意図と違う部分ではあるのだけれども、医師の学習機会の増加・インターネットを活用した情報取得手法の拡大といった二次的な要素も生まれたわけですから。

 ただ、アイロニカルに語ったのには理由があります。個人的には、高すぎる時価総額と株主構成によって大胆な動きが取れなくなり、出来上がっちゃった感を生んでいる気がしてならないのです。豊潤な利益を転職情報ポータルなどの誰にでも出来る事業や有料の医師への質問サイト等ではなく、もっとエッジの効いた事業に投資して欲しいと思うのです。ビジネスを収益面から見ると天才的にイケてるのですが、社会価値という視点から見るとまだまだやれる余地はあると思います。

 続けて本題の1000億円企業の萌芽その1をご紹介します。

 次回に続く


ホスピタリティアライアンス代表取締役
TOCコンサルタント    宮川 耕

医療2.0《医療とWEB2.0》

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